スタートから3カ月 朝ドラ「おむすび」が“浅ドラ”に変質した理由 古着バイヤーも靴職人も「キャラ設定」が雑すぎる
良い嘘と悪い嘘
ところが、それっきりナベさんも“ギャル靴”も出てこないまま1年以上が過ぎた。今では脚本をオリジナルに書き変える人まで現れている。 《結が社食の栄養管理に悩み、ヨン様は肩の不調、愛子さんが家出し聖人さんが困惑している中、米田家・商店街からその存在を忘れ去られてしまったナベさんであるが、実はギャル靴で大儲けしているのであった》 「もはや“反省会”を超えてしまいました。こうした職人が出てくるドラマでは、脚本家とスタッフが、その職業のプロフェッショナルや経験者、専門家などに対面で取材をするのが普通です。しかし、『おむすび』では脚本家が取材情報を脚本に落とし込めていない。もしかすると取材もなかったのかもしれませんが、となると表面しか理解せずに書いているのではないかとまで考えてしまいます。それが視聴者に違和感や矛盾、不信感、モヤモヤ、イライラを与えているのではないでしょうか。結があまりに簡単に栄養士になってしまうとか、佐野勇斗が演じる社会人野球選手の変化球“ヨン・シーム”も、どんな握りで、どう回転させ、どんな変化をするのかなどが描かれていないから、なんだか嘘くさい」 脚本家のジェームス三木氏は、優れた脚本家の条件の一つに「嘘つきであること」を挙げていた。 「倉本聰さんは『ドラマは大きな嘘をつくわけだけれど、小さな嘘は、絶対ついちゃいけない』とも言っています。ドラマ全体がフィクションなら大きな嘘だけれど、細部に時代考証など本当のことを入れることで、大きな嘘も真実になるということです」 「おむすび」に足りないものとは?
デイリー新潮編集部
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