社会問題化しにくい女性のひきこもり、悩み語り支え合う「女子会」広がる 男性多いイメージだが実際は半数が女性
これまで男性をイメージして語られることが多かった、ひきこもり。実際は女性が約半数を占めることが、最近の国の調査で明らかになった。専門家によると、女性は家事手伝いや専業主婦として家にとどまるケースも多く、社会問題化しにくかったという。中国地方では、当事者の女性を支えるための「女子会」が各地で開かれている。 【写真】女子会でホットケーキを焼いて交流する参加者 「非常口の表示すら見えない真っ暗なトンネルにいるようだった」。広島市の女性(45)は約5年間、自宅アパートに引きこもっていた。直前の10年間はショックな出来事が続いた。夫の度重なるうそやギャンブルで離婚。娘は意に反して義父母に引き取られた。その後に交際した男性との間にできた子どもは流産した。「男の人はいつも痛くもかゆくもなさそうで、女の私だけがしんどくなった」と振り返る。 週1回、近くのスーパーへ買い物に行くのが精いっぱいの日々。家で死ぬ方法を探していた。税金の督促状が届き、役所に「払えない。助けて」と訴え、保健師につないでもらえた。今は訪問看護を利用しながら、就労継続支援事業所に通う。 NPO法人青少年交流・自立・支援センターCROSS(西区)理事長の斎藤圭子さんによると、女性はこれまで家事手伝いや専業主婦という名目で家にとどまる人も一定におり、引きこもっても親も本人も世間を気にせずに済んだという。 ただ、働く女性は増え、斎藤さんは「引きこもる自分を否定する意識が強まり、苦しみは深まっている」と強調する。ひきこもりは男性に多い、とされた背景については「働いていない息子を心配する親が相談しにくるケースが目立っていただけ」と指摘する。 そんな中で注目されているのが、同性だけで集まれる「女子会」だ。2016年ごろから全国各地で始まり、中国地方でも広がりを見せる。 昨年11月下旬、福山市であった女子会は市スポーツ協会が主催し、若者から中高年まで10人が集まった。人間関係の難しさや仕事の悩みについて語り合い、ホットケーキを焼いて交流した。 参加した市内の40代女性は趣味と買い物以外は外出をしない上、夫とも会話がほぼない。きっかけはおととしパートを辞めたこと。上司からきつく叱られることが多く、限界を超えた。 働けないわけを夫に理解されず「家のローンがあるから働け」と言われている。「口がふさがったと感じるほど、誰ともしゃべっていなかった。ここには共通の話題がある」と表情を和らげた。 広島ひきこもり相談支援センター・西部(西区)は毎月第1月曜に女子会を開く。ペットや、お薦めのアイドルの話題で盛り上がる。とっとりひきこもり生活支援センター(鳥取市)も毎月開く。20~40代の5、6人が犬と遊んだりアート作品を作ったりし、さりげなく触れ合う。 当事者たちでつくる一般社団法人「ひきこもりUX会議」(東京)は200回以上の女子会を開いてきた。代表理事の林恭子さん(57)は「行政はまだ『引きこもるのは男性』という意識が強い。地域の女性が何に苦しみ、どんな支援を求めているかをもっと知ろうとしてほしい」と訴える。 <ひきこもり> 広義では、仕事をしておらず、半年以上自室や家からほとんど出ない人のほか、趣味の用事のときだけ外出する人も指す。2023年3月に公表された内閣府の調査では、推計で約146万人いるとされた。女性の割合は15~39歳で45%(16年公表の前回調査では37%)、40~64歳で52%(19年公表の前回調査では23%)だった。
中国新聞社