F1に新規参戦したきゃ900億円以上用意しな! 次期コンコルド協定で新たな“希薄基金”設定か。参戦ハードルは高く
motorsport.comの調べでは、次期コンコルド協定の一環として、F1は新規参戦チームに6億ドル(約942億円)の“希薄基金”を求めることを検討しているようだ。 【ギャラリー】F1史上最も醜い、2014年のF1マシン全車 シリーズ運営や商業的な権利などを定めるコンコルド協定。新しい協定が導入される2026年に向けて、既にF1チームやF1の商業権を司るフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)の間で話し合いが行なわれている。 既にmotorsport.comでも報じた通り、新コンコルド協定を巡る交渉では、その歴史的貢献によってフェラーリに与えられてきた参戦ボーナスに上限を設けることが検討されるなど、大きくマネーが動くF1の商業的な部分が決まることとなる。 そして情報筋が明らかにしたところによると、新コンコルド協定では、ゼネラル・モーターズ傘下のキャデラックと共にアンドレッティ・グローバルが新規F1参戦を強く求めているという背景から、新規チームに対してこれまでとはことなる希薄基金を設定することが検討されている。 希薄基金はチーム増加によって希薄化する配当金の補填として、既存チームに損失相殺として分配される追加支払金だ。 以前のコンコルド協定では2億ドル(約313億円)と規定されていたが、この金額はF1が今ほど財政的に健全ではなかった際に決められたモノ。現在のF1の商業的な成功に基づくと、既存チームが直面する損失を補填するには十分な金額ではないという見方が強かった。 だからこそ、次期コンコルド協定では新しいフォーマットの希薄基金が検討されているのだ。 motorsport.comの調べでは、次期コンコルド協定に関する議論のたたき台としてチームに送付された草案の一部として、新しい希薄基金が提案された。提案された基金は定額ではなく、一定期間(おそらく5年間と考えられている)にわたって、既存チームに補填を行なう方式のようだ。 最初に提案された金額は、2026年に参戦を希望するチームに対して総額6億ドル(約942億円)相当、2028年からは7億ドル(約1098億円)相当になると考えられている。またここには、新チームは参戦初年度に配当金を受け取る権利がないという追加規則も含まれている。 実際に高額な希薄基金が設けられることとなれば、アンドレッティのような新規参戦を目指す団体にとって、ゼロベースで新たなF1チームを作り上げていくか、それとも既存チームを買収するべきか、再考を促すことになるかもしれない。 レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表はモナコGPの際、アンドレッティのF1参入を歓迎するものの、既存チームの買収を検討するべきだと語った。 「アンドレッティには偉大なレースの歴史を持っていると思う」とホーナー代表は言う。 「マリオ(アンドレッティ)はこのスポーツにおけるレジェンドだ。もちろん、キャデラックはアメリカの巨大自動車メーカーだ」 「2028年にもし彼らが独自のエンジンを搭載することになれば、当然再検討するとF1は言っている。しかし、それに加えて、アンドレッティがこのスポーツにある既存チームと安定性を守り、参戦したいと望むのであれば、アウディがザウバーを買収したように、既存チームのひとつを手に入れるのが最善策だというのは明らかだ」 アンドレッティはFIAから新規参戦の承認を得たものの、今年1月にF1側から2025年の参戦を拒否された。その後も、新テクニカルレギュレーションが導入される2026年シーズンからの参戦に向けて、ファクトリーの新設やリクルートなどを積極的に行なっている。 キャデラック従えるGMは2028年からのF1パワーユニット製造者登録を完了。アンドレッティ側はアメリカ政界を巻き込んでF1側にプレッシャーをかけるなど、参戦に向けた根回しを続けている。
Jonathan Noble