『ブギウギ』”ゴシップ記者鮫島”が『FRIDAY』に!みのすけは台本を読んで「これ当て書き?」
トレードマークのハンチング帽を被り、ニヤけた表情でスズ子に近づき嫌みな一言を口にせずにはいられない男・鮫島……。SNSでは、いつしかそんな彼のことを「鼻が利きすぎるゴシップ記者」や「ゲスニック鮫島」などと呼ぶようになっていた。 【不敵な笑み】すごい!『ブギウギ』のゴシップ記者・鮫島が『FRIDAY』編集部にきた! 「実は、彼の正式な役名は『鮫島鳥夫(さめじまとりお)』っていうんです。字面といい、言葉の響きといい、なんかいや~な感じしますよね。脚本家の方ってすごいです。よくこんな名前思いついたなって(笑)」 鮫島を演じた俳優・みのすけ(58)は、まるで他人事のように微笑んだ。 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』は、戦後の「ブギの女王」といわれた笠置シヅ子をモデルに、趣里(33)演じる主人公・福来スズ子の半生を描き、大好評を得た。みのすけは、そんなスズ子のゴシップを狙う雑誌記者・鮫島を演じ、視聴者の怒りを一身に浴びた。 「登場人物に性格の悪い人が1人もいないんです。その中であの鮫島のキャラですから嫌でも目立ちますよね。それは、僕にとっては、とてもありがたかったです。しかも、台本をいただいて初めて読んだ時に、スッと納得がいったっていうか……。 それまでも悪役というか、嫌みな感じの役を結構やっていたので、 ちょっとこれ、当て書きかな? って感じるところはありました(笑)。台本を読めば読むほど、なるほどなるほど、意外とやりやすいぞって」 ’17年のNHK大河ドラマ『おんな城主直虎』では、直虎の敵役で知られる「徳川四天王」の一人、酒井忠次を演じた。’20年の『半沢直樹』(TBS系)では、黒縁メガネ姿のエリート銀行員でありながら、代議士に対し20億円の不可解な個人融資を行っていた人物を演じている。いかにも、嫌みな”小悪党”という雰囲気の役が多く、鮫島も似たようなイメージだ。 「いくら記者でも、『なんでそんなこと言うかなぁ』っていうことばかりで、本当に意地悪な感じでした。鮫島はすごい悪役なんですけど、台本を読んでいると、あれ、もしかしたらスズ子の一番のファンだったのかもしれない……みたいな匂いがして。演じている間は、悪い面ばかりを見せていましたが、監督が、記者会見のシーンの一番最後に帽子を取って笑顔を見せる演出をつけてくれたんです。 そこに集約されるような感じになりました。徐々に良くなっていくとかじゃなくて、基本、鮫島は悪いやつで、最後の記者会見も悪いままだったのに突然、あれ? って、いう方が面白いですよね。『こいつ、実は一番ファンだったんじゃないの』って、最後に視聴者を裏切るみたいな」 鮫島と似たようなハンチング帽を被ってはいるが、銀縁メガネの奥の目は、鮫島の捻た目つきとは違い、実に穏やかだ。 ◆高校の先輩だったKERAに誘われてバンド活動を始めたことが全ての始まり 東京都出身のみのすけは、日本大学鶴ヶ丘高校で軽音楽部に入部。そこで2学年上の先輩だった劇作家・ケラリーノ・サンドロヴィッチ(61)に誘われて、バンド『有頂天』にドラマーとして参加する。 「高2、高3年の時は、ライブハウスに入り浸っていました。でも、KERA(ケラリーノの別名義)さんは、バンドをやりながら演劇部や映画研究会に入ったりしていたので、バンドのステージ上でコメディ的なこともやったりしていました。その後、『劇団健康』を立ち上げ、そこにも誘われて、犬山イヌコさんや田口トモロヲさんらと一緒に参加したんです。 みんな素人だし、下手くそだし。でも、当時流行っていた『夢の遊眠社』や『第三舞台』のような演劇には、対抗意識を燃っていて、トガッてました(笑)。ナンセンスコメディばかりやっていましたね。正直、僕はKERAさんに誘われたからバンドもお芝居もやったのであって、どちらもプロになろうなんて当時は全然思ってなかった。でも、やっているうちに劇団というか、舞台役者が面白くなってきてしまって……」 バンドでは、その後、『筋肉少女帯』や『ガガーリン』といった’80年代から’90年代初頭の伝説的なバンドにドラマーとして参加する一方で、’93年にKERAが旗揚げした劇団『ナイロン100℃』の看板俳優として、キャリアを積んでいった。 「俳優の仕事はとても面白いし大好きです。ずっと劇団をやってきたので、どちらかというと自分は舞台がメインの俳優だとは思っていますね。映像は、途切れ途切れに撮影したり、リハーサルも少なかったりで、最初に出始めた時は馴染めずに苦労しました。台本通りに忠実に演じていたという感じです。だからテレビに出たいという欲はそれほどありませんでした。今は楽しくなってきましたけどね」 そうは言っても、「自分も朝ドラに出てみたい……」 という思いは、いつしか芽生えていたという。そして、ようやく叶った念願の朝ドラ出演。 「自分自身っていうよりも、 家族とか親戚がこんなに喜んでくれるんだって感じで。そこが全然違いました。でも自分は意外と同じ感覚でしたね。別になんにも変わらなかったです」 みのすけの出身は東京だが、現在は家族と共に名古屋に在住しているという。 「近所の人も僕が俳優って知らない感じだったので。でも、さすがに朝ドラに出たら、あれ? みたいな。本屋さんに行くと店員さんから、『調べましたよ』みたいなことを言われるし。でも、道を歩いて声をかけられることはありませんね。鮫島みたいな人はいないでしょうから、僕みたいなこんな普通の人がやっていたって、さすがに気づかないんじゃないですかね(笑)」 この日、インタビューのために『FRIDAY』編集部まで足を運んでくれたみのすけ。彼は、週刊誌記者に対し、これまで、どのようなイメージを抱いていたのだろう……。 ◆「最近の芸能ニュースは……重いですよね」 「昔は梨元勝さんなんかがいたりして、スキャンダル報道にしても、どこか逃げ道があるというか、今よりもうちょっと明るかったというか、軽かったっていうか……。でも、今はスキャンダルと”事件”にあまりに近い……。うーん、重いですよね。『FRIDAY』さんはどうだろう……。 僕のイメージでは、そこまで重くないかな。鮫島がいた時代のことはわかりませんが、僕なりにその時代と週刊誌記者をイメージしてああいう感じになりましたけど、それがあっているかどうかは自分ではわかりませんね」 「嫌われ役」として、お茶の間にその存在を広く知られることとなったみのすけが、役者として、次に目指しているものはなんなのだろう。 「自分にはそういう欲はあまりなくて、映像の場合は、役を与えてもらえばって感じですかね。役の人物が何を求めてるかっていうところに忠実に入っていければいいかなって思ってるんで。 演劇の場合もスタンスは同じですけど、KERAさんと三十何年も一緒にやっていると、お互い手の内も分かっていたりするので。やったことのないことをやってやろうとか、そういう冒険はあるかもしれないです」 そんな彼が今、一番やりたいことは、「畑仕事」なのだとか。あくまでマイペースなみのすけ。映像では、“台本に忠実”なみのすけが、舞台ではどんな冒険を見せてくれるのか。乞うご期待である。 文:佐々木博之(芸能ジャーナリスト)) 宮城県仙台市出身。31歳の時にFRIDAYの取材記者になり、数々のスクープを報じてきた。その後も週刊誌を中心に活躍。現在はコメンテーターとしてもテレビやラジオに出演中
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