<社会インフラを行く!>ヤマタノオロチ「箱崎ジャンクション」
東京都中央区にある首都高速道路の「箱崎ジャンクション」。ここは首都圏交通の要衝です。ジャンクションであると同時にインターチェンジであり、そして案内板のないパーキングエリアまでもが併設されているという、実に複雑な構造になっています。 ジャンクション(JCT)は、日本語で分岐点を意味します。北関東・東北方面につながる6号向島線、千葉方面につながる7号小松川線、そして神奈川方面につながる9号深川線という3つの自動車の流れが、ここ箱崎ジャンクションに集中し、そして拡散していきます。 その複雑な構造ゆえ、進行方向や車線変更にとまどう「ドライバー泣かせ」の難所として知られていますが、設計・施工したエンジニアたちをも泣かせたに違いありません。昭和50年代の建設でしょうが、一体どうやって施工したのでしょうか? 設計レイアウトだけでも容易ではないはずです。当時の事業者、設計エンジニア、施工会社の一体感が感じ取れます。 地上から鑑賞すると、鉄製の柱と梁、そして主桁が四方八方に、しかも立体的に絡みながら伸びる様子はクモやタコといった生き物を思い起こさせます。一部では、日本神話に登場する「ヤマタノオロチ」とも呼ばれているほどの構造物です。 夜になるとその生き物は、ナトリウムランプや水銀灯などの照明のなかに浮かび上がって、さらにその怪しさを増しますが、同時にこの狭い土地に凝縮された構造美は、訪れる者を魅了し、そして、畏怖の念を抱かせます。 (監修:吉川弘道・東京都市大学教授)