来年の教員採用試験「早める」「例年通り」 早まる民間採用に対抗、教育実習と重なり考慮…分かれる対応の明暗はいかに?
2024年度の教員採用試験について、文部科学省が全国の「標準」とした6月16日の近辺で実施する事例が長野を含む関東・中部地方の16都県では愛知、岐阜の2県にとどまることが22日、信濃毎日新聞の取材で分かった。文科省はこれまでより約1カ月早い実施を求めたが、学生の教育実習が重なることなどで敬遠された。発表済みの10都県では、長野など6都県が本年度と同時期の7月初めごろの計画。一方、文科省の標準よりさらに早い5月に行う茨城、静岡のケースもあり、教員確保で明暗が出る可能性がある。 【表】関東・中部地方の都県教育委員会が行う教員採用1次試験の日程
大学生ら対象の民間採用は6月1日と定められた選考の解禁が形骸化し、先行して実施する企業が目立つ。文科省は今年5月、対抗策として教員採用試験の前倒しを都道府県教育委員会に要請した。
ただ、長野県教委は6月中旬では大学4年時の教育実習と重複すると懸念し、1次試験をほぼ例年通りの6月29、30日に決定。内堀繁利教育長は25年度以降の対応に含みを残しつつ「前倒しするにはさまざまな課題がある。24年度の試験は大きく時期を変えないことにした」とする。
栃木、埼玉、東京、神奈川、山梨も例年通りの7月上旬に行う。教育実習の重複を避ける姿勢は共通し、埼玉県教委は「日程を検討する時間も短かったため、例年通りに実施する」と説明する。
一方、前倒しを決めたのは茨城、岐阜、静岡、愛知。岐阜県教委は全国的に前倒しの傾向があるとみて、文科省方針にほぼ沿う6月15日とした。愛知県や名古屋市も同日程で、岐阜県教委の担当者は「(近隣自治体と)日程をずらすと、内定辞退などで数が読めなくなる。ある程度調整して決めた」と話す。
文科省教育人材政策課は、試験の早期化には教育実習が課題であることを踏まえた上で「民間の採用が早い中で教員採用試験の時期が長く変わらないままであるのを改めたいと考えている」と強調。25年度に向けて「教育実習の実施時期なども調整し、前倒しへの工夫をしてもらいたい」としている。
教員採用試験の志願者減少は全国的な課題だ。長野県は来年度、県出身や移住希望の現職教員を対象に秋選考を計画。関東・中部地方では神奈川県も秋選考に乗り出すほか、群馬や山梨、愛知など7県は大学3年時に1次試験を受けられるようにする。