2023年の出来事を武田砂鉄が振り返る──「パーティ券」「岸田首相」「大阪・関西万博」「マイナンバーカード」ほか
2023年の出来事を総括。ライターの武田砂鉄は何を語る? 【写真を見る】武田砂鉄が振り返る「2023年のいやな感じ」
武田砂鉄「検討」「決断」「議論」「信頼」「共感」はどこへ消えた?
12月13日、東京の首相官邸で記者会見する岸田文雄首相。岸田首相は、政治資金スキャンダルに関与した複数の閣僚を交代させると述べた。(写真:Franck Robichon - Pool/Getty Images) それにしても、パー券かよ、と思う。パー券でノルマを課して、頑張って必要以上の枚数を売った人に対して、その儲けを秘密裏にキックバックしていたそうなのである。自民党内で続いてきた慣習について、「政治の世界では文化」(鈴木淳司前総務大臣)と言ってのける政治家まで現れた。政治家を辞め、コメンテーターとして重宝されている人が、これまで言わなかったくせに、いかにノルマが大変だったか述懐し始める。知れば知るほど、「この人たちは、人々の生活なんてどうでもいいんだな」という乱暴な結論が似合ってしまう。 政治に興味のある人は、この腐敗を報道などで追いかけるが、そもそも遠ざかっている人は、どのように腐敗しているかではなく、腐敗臭を嗅ぎ取ってますます近づかなくなる。以前、森喜朗が「(選挙に)関心がないといって寝てしまってくれれば、それでいいんですけれど……」と発言して問題視されたが、この腐敗臭は同じ効果を持ってしまうかもしれない。政治家に向けられる大雑把な理解として、「どうせあいつら自分の権力のことしか考えてないんだろ」というものがある。さすがに解像度が粗い見解だが、今回の事態って、その大雑把な見解とぴったり合致してしまうのだ。 2023年1月、岸田文雄首相は、施政方針演説、つまり、今年はこうやって政治を動かしていくと誓う場面でこう語っていた。 「この国会の場において、国民の前で正々堂々議論をし、実行に移してまいります。検討も決断も、そして議論も、全て重要であり必要です。それらに等しく全力で取り組むことで、信頼と共感の政治を本年も進めてまいります」