【清水草一の道路ニュース】銀座のど真ん中 日本最初の高速道路[KK線]がなぜ廃止されなければいけないのか? 今後はどうなる?
■この景観を味わうなら今しかない
東京高速道路株式会社は現在も健在で、銀座1丁目から8丁目にかけて、『銀座コリドー街』など高架道路を屋上とする全14棟のビルは、店舗、オフィス、駐車場として利用されており、その賃貸料によって、道路が維持・管理されている。 ただ、高架下が店舗のため、道路の大規模な改修は難しい。そもそもこの会社にとって、屋上の道路はなんの利益も生んでおらず、維持管理費が出ていくだけだ。開通から65年間、料金無料で開放されてきたが、走行車両の振動もあり、いずれは建造物としての限界もやってくる。 KK線は、屋上を道路として開放することを条件に、都から土地の利用や建物の建設を許可されているので、勝手に道路を廃止することはできないが、2年前、都が遊歩道化を決定したことで、すんなりと廃止が決まった。 KK線が、首都高ネットワークにとってどうしても必要な路線なら、税を投入するなどして、道路を残す選択肢もあっただろうが、それほどでもなかったのも、廃止の理由としてあげられる。KK線新橋付近の断面交通量は、平日平均で約1万5000台/日。並行するC1(都心環状線)の約10万台/日に比べると、数分の1にとどまる。大型車も通行禁止だ。 実際のところKK線は、だいたいいつも空いている。まるで首都高(KK線は首都高ではないが)のエアポケットで、走るたびに不思議な感覚に襲われる。 東京を舞台にしたアカデミー脚本賞受賞映画『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年制作)は、主人公が乗る運転手付きのセンチュリーが、KK線を経由して空港に向かう場面で締めくくられている。同映画のソフィア・コッポラ監督も、KK線の非現実的な景観に惹かれたのだろう。 そんなKK線を走れるのも、あと半年間だ。東京の隠れた名所を、いまのうちに味わっておきたい。