静岡出身の32歳女性がリーダーに…ルフィグループの”黒幕”JPドラゴンに「女版新組織」立ち上げ説
男の左手の親指の付け根あたりには『JP DRAGON』というタトゥーが入っていた。背中には、浮世絵風の刺青も彫り込まれている。3月4日、フィリピンの首都マニラで入国管理局に拘束された鹿児嶋孝之容疑者(55)である。同局幹部は「日本から逮捕状が出され、旅券は失効している。今後、日本に強制送還する予定だ」と語った。 【画像】手には「JP DRAGON」のタトゥーが…! JPドラゴンメンバーの戦慄写真 鹿児嶋は、『JPドラゴン』と呼ばれる現地不良邦人組織のメンバーだ。警察官になりすまし、日本にいる高齢者を標的にキャッシュカードを騙(だま)し取る特殊詐欺に関与したとして、福岡県警が窃盗容疑で逮捕状を取っていた。 実はJPドラゴンのメンバー拘束は、鹿児嶋が初めてではない。1月下旬には「大幹部」の一人である小山智広容疑者(49)が、フィリピンで起きた投資詐欺に関与した疑いで、現地警察に逮捕。入国管理局収容施設に移送されている。この組織は、フィリピンを拠点に指示役が「ルフィ」などと名乗って広域で強盗を繰り返したとされる日本人特殊詐欺グループとつながっていた。同局収容施設で私からの面会に応じた小山は、組織について次のように説明していた。 「(組織の元になっている)JPフィリピン・カンパニー・グループという会社があって、フィリピンに税金を納めている(ほどまともな集団だ)。所属するメンバーは日本人が10人ぐらいいる」 しかし、法人登記を管轄する現地の関係省庁で社名を調べてみたが、見つからなかった。架空の会社かもしれない。 JPドラゴンのリーダーとされるのが徳島県出身のR(53)だ。一部の邦人社会では、20年以上前から悪名高き”闇の存在”だが、小山はこう断言する。 「Rは闘鶏とかいろいろやっている。普通の人ですよ。悪党ではない。みんなRからカネを取られたとか、人を殺しているとか言うけど、絶対にあり得ない」 JPドラゴンと特殊詐欺グループの関係が決定的になったのは、小山が昨年2月、弁護士の加島康介被告を通じ、警視庁原宿署に勾留中の「ルフィ」こと今村磨人(きよと)被告(39)とビデオ通話をしたことだ。その際、今村に「よけいなことは話すな」と口止めしたとされるが、小山は私に、通話は認めたものの口封じは否定。こんな裏事情も明かした。 「(今もフィリピン国内で詐欺を)やっている日本人メンバーは名前も場所もよく知っている。言えないけど。僕はそれをネタに警察と話をしていこうかなと」 小山は日本の捜査当局に「司法取引」を持ちかけるつもりなのだろうか――。 ◆噂される「新組織」の存在 入国管理局によると、ルフィの残党の日本人は現在、フィリピン国内に少なくとも十数人いる。彼らの多くは不法滞在であり正規の仕事には就けないため、「何らかの違法なビジネスに関与している可能性はある」(前出の入管幹部)という。 残党の動きが不透明な中で、新たな疑惑もネットを中心に囁(ささや)かれている。「女版JPドラゴン」と呼ばれる謎の新組織が結成されているというのだ。JPドラゴンから派生したとされる組織で、リーダーとみられる日本人女性Mは、静岡県出身の32歳。’20年2月にフィリピンに入国して以降、現在も潜伏中だ。ふっくらした体格で、黒髪を後ろに束ね、一見すると一般人に見えるが、配下には複数の日本人男性を従えているという。Mを知る元かけ子の男性が語る。 「金融庁の職員を装って電話をかけるのがめちゃくちゃうまかったんです。僕が強制送還されて以降、彼女の動向は知りませんでしたが、JPドラゴンと別の組織を立ち上げていたとは……」 日本の捜査資料によると、Mは日本にいた’18年に千葉県や埼玉県に住む高齢者に電話をかけ、警察官を装ってキャッシュカードを騙し取った疑いで逮捕状が出ている。ただ、前出の入管幹部は「MがJPドラゴンのメンバーとは認識していない」と語っており、真相は不明だ。 いまだにフィリピンに蠢(うごめ)くルフィの残党やJPドラゴン。日本は今でも、彼らの標的の一つであり続けている。リーダーのRやほかのキーマンたちの居場所を突き止めて根こそぎにしなければ、今後もトカゲの尻尾切りは続くだろう。(文中、一部敬称略) 『FRIDAY』2024年3月29日号より 取材・文:水谷竹秀(ノンフィクション作家)
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