【棚倉城400年】観光の効果を郡内に(8月22日)
棚倉町の棚倉城は来年、築城400年の節目を迎える。町は今秋から順次、記念イベントを催し、県内外からの集客に取り組む。棚倉を含む東白川郡4町村は立地上、観光事業を進める上で不利な面も少なくない。全国から訪れる歴史愛好家らが郡内全体に足を延ばす仕掛けづくりを進め、地域活性化につなげてほしい。 棚倉城は江戸時代の1625(寛永2)年、5万石の大名として棚倉藩主に就いた丹羽長重が築いた。城主は8家、16代入れ替わり、戊辰戦争での新政府軍との戦いで落城した。東京ドームの2・5倍に当たる11万5000平方メートルの敷地を有し、長方形の本丸、二ノ丸、三ノ丸が設けられた。櫓の間を結ぶ多門櫓は東北地方の城郭で最大の規模だったと伝わる。現在は町中心部の公園として町民に親しまれている。桜、つつじ、紅葉の名所でもある。 町は今年から3年計画で築城400年のイベントを繰り広げる。プレ行事として10月20日、子どもの舞台発表中心の「たなぐらまるごとフェスタ」を城跡内で開く。本番の来年秋は、歴史講演会やステージイベントを予定し、2026(令和8)年にはJRグループの大型観光企画「デスティネーションキャンペーン(DC)」と連携した企画を検討する。「東北の小京都」として売り出している城下町を、全国に向けて発信する絶好の機会になる。
棚倉町は東北、常磐両自動車道のはざまに位置し、東北新幹線新白河駅から中心部まで車で40分ほどを要する。東西南北から足を延ばしにくい地理的な「弱点」を抱えている。発想を転換すれば、観光は今後の地域の成長産業とも言える。霊場山本不動尊、目を見張る宮川の清流、由緒ある二つの都々古別神社など町内の名所・旧跡は少なくない。古里のシンボルである城跡の記念の年を「観光元年」に位置付け、誘客に工夫を凝らすべきだ。 棚倉を訪れた観光客を矢祭、塙、鮫川の郡内3町村にも誘導したい。それぞれ花の名所、渓谷や滝、温泉、グルメなど人を引き付ける魅力に事欠かない。各町村に点在する施設や名所を巡る周遊ルートを中心になって練り上げるのは、「郡都」たる棚倉町の役割だろう。(菅野龍太)