【5日前のパスタを食べた20歳の学生が死亡】電子レンジの再加熱での殺菌効果も期待できない「チャーハン症候群」の恐怖
チャーハンやパスタには要注意
さて、その「チャーハン症候群」とは具体的にどのような病気なのだろうか。 先述した引用記事で紹介されている事例に関しては、「20歳の学生は、下痢と嘔吐ののち、肝臓が壊死して臓器不全に陥った可能性がある」と報告されている。しかし、セレウス菌といってもさまざまなタイプが存在するため、ここまでの劇症例がすべてではないはずだ。 筆者は医療資格を持っているわけではないので、ここでは「チャーハン症候群」の原因菌であるセレウス菌に関する情報についての引用と解説に留めたい。 まずセレウス菌自体は日本にも存在する土壌細菌で、この菌が原因でおきる代表的な食中毒の事例としては、チャーハンやピラフ、焼きそば、スパゲッティなどの米飯・麺類の調理食品が挙げられるようだ。 NIID国立感染症研究所が公開している情報によれば、セレウス菌感染症について以下のように記載されている。 セレウス菌感染症はほとんど食中毒の形をとり、嘔吐型と下痢型がある。わが国においては1960年代以降、セレウス菌食中毒が報告されており、そのほとんどが嘔吐型である。厚生省は1982年3月に食中毒の原因菌として本菌を新たに追加指定し、1983年の食中毒統計から病因物質として記載されるようになった。 (出典:NIID国立感染症研究所「セレウス菌感染症とは」) また、嘔吐型のセレウス菌食中毒に関する臨床症状については、以下のように記載されている。 嘔吐型は食品内で産生された毒素によって発症する毒素型食中毒で、潜伏時間は30分~5時間で嘔吐が主である。実際に1987年に東京で発生した事例における患者318名の症状発現状況を見ると、主な症状は嘔吐、吐き気、下痢、腹痛であり、いずれも軽症であった。 (出典:NIID国立感染症研究所「セレウス菌感染症とは」)
電子レンジでの再加熱では殺菌できない
では、セレウス菌感染症を未然に防ぐためには、どのような点に注意すればよいのだろうか。 東京都保健医療局が公開している情報では、以下のような注事事項が記載されている。 この菌は耐熱性(90℃60 分の加熱に抵抗性)の芽胞を形成します。増殖至適温度28~35℃です。また、おう吐を起こす毒素も熱に強く、126℃90分でも失活しません。 (出典:東京都保健医療局「セレウス菌」) 一般に芽胞の状態になった細菌は、熱や薬剤に強くなり、加熱やアルコール消毒などによる殺菌がしづらくなる。セレウス菌は、先の引用のとおり、「90℃60分の加熱」にも抵抗性があるとされているので、電子レンジ程度の再加熱くらいでは殺菌を期待できないことを意味する。 また、予防のポイントとしては、以下の2点が紹介されている。 1.一度に大量の米飯やめん類を調理し、作り置きしないこと。 2.穀類等が原料の食品は、調理後保温庫で保温するか、小分けして速やかに低温保存(8℃以下)すること。 (出典:東京都保健医療局「セレウス菌」) 世界規模での地球温暖化で暖冬がつづき、冬でも地域や天候によっては室温が8℃を下回らないことは少なくない。また、暖房をつける場合は室温として18~22℃程度になることが一般的だ。 食中毒を予防するうえで、「冬だから」と油断しないよう心がけたいものだ。 文/井上晃