【韓国ドラマ】〈追悼〉「国民の母」と呼ばれ、料理上手で知られた女優キム・スミ、故郷の全羅道・群山の味
「クンミン・オンマ」(国民の母)と呼ばれた女優の一人、キム・スミが先日、75歳で亡くなった。 ■【画像】Netflix『白と黒のスプーン』で注目の女性中華シェフ、チョン・ジソンも追悼、「国民の母」女優キム・スミとのツーショット 70代半ばという意外と若い年齢に驚いた人が多かったろう。韓国では知らない者のいない最長寿ドラマ『田園日記』(1980~2002年)以来、長らくオモニ役、ハルモニ役を演じて来たせいだ。
■国民的ドラマ『田園日記』では31歳で老母を演じたキム・スミ
キム・スミは1949年10月24日生まれで、全羅北道(現・全北特別自治道)群山出身。 『田園日記』には、チェ・ブラム、キム・ヘジャ、キム・ヨンゴン(ハ・ジョンウの父)、コ・ドゥシムらが出演していた。そのなかで、キム・スミは放送開始当時31歳なのに老母を演じ、息子を演じた俳優が彼女より年上だということが話題になった。 ここ数年の出演作で筆者の印象に残っているのは、イ・ソジン、クァク・ソニョン、ソ・ヒョヌらが出演のNetflixドラマ『エージェントな人々』だ。 芸能事務所で働く人々と所属俳優たちの物語で、キム・スミは本人役で出演。劇中、カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)とキムチを事務所に差し入れするシーンがあったように、料理上手なことで有名だった。 自慢の腕をふるう冠番組も多く、バラエティ番組でも手料理をレギュラー出演者たちにふるまうシーンが多かった。
■キム・スミの故郷、群山(クンサン)から送られてきた大衆食堂の写真
数日前、韓国を旅行中の友人が、旅先の群山で訪れた大衆食堂の写真を送ってくれた。 その店を筆者が初めて訪れたのは17年も前のこと。マッコリなど酒を頼めば、西海の幸を中心としたつまみを10皿以上出してくれる太っ腹な店だった。今でも酒2本と10皿ほどのつまみで2~3万ウォンだという。破格である。
地図で言えば、朝鮮半島南部の左下半分に位置する全羅道(全北特別自治道と全羅南道)は、半島最大の穀倉地帯で、西側と南側は滋養豊かな海の幸をもたらす干潟を擁している。 1997年に、全羅道出身の金大中政権が誕生するまでは政治的に不遇で、長らく農業を産業基盤としていたため、分かち合いの精神が発達していて、惜しみなく与える人が多いと言われた地域だ。 1960~70年代は地元に第二次、三次産業がないので、多くの若者がソウルに上京し、飲食業に就く女性も少なくなかった。今でもソウルの食堂の店名には全羅道の地名が冠されていることが多いのも、それと無縁ではない。 友人が群山から送ってくれた動画の鍋から立ちのぼる湯気に見とれていると、料理上手だったキム・スミの故郷がまさに群山だったことを思い出した。 自宅で亡くなったそうだが、彼女が手塩にかけた漬け物はまだ冷蔵庫の中にあるはずだ。それらが誰かの口に入るのを待っていると思うと胸がキュンとした。
チョン・ウンスク
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