軽度認知症の患者にレカネマブを点滴投与する高松病院の医師＝22日、十和田市の高松病院

　青森県十和田市の高松病院は22日、アルツハイマー病の進行を遅らせ認知機能の低下を緩やかにすることが期待される新薬「レカネマブ」を同病院に通う患者に投与した。同病院によると、県南地方では初めての実施。高松幸生院長は「レカネマブはまだまだ認知度が低い。早い段階から行う認知症予防を地域に広めていきたい」と話す。 　高松病院はレカネマブの保険適用を受け、投与に向けて近隣地域の病院と連携体制を整えてきた。まず同病院で専門医による診察や認知機能検査などを行い、レカネマブの適応対象かどうかを判断。その後、三沢市立三沢病院や八戸市立市民病院で、記憶障害の原因と考えられているタンパク質「アミロイドベータ」の脳内の蓄積を確認する検査を行い、投与可能な場合に実施する。レカネマブは、2週間に1回の点滴投与を1年半にわたり行うが、重篤な副作用が生じた場合は、十和田市立中央病院とも連携して対応する。 　レカネマブの投与は、アルツハイマー病による軽度認知障害（MCI）か軽度認知症の患者が対象。認知症の前段階であり、日常生活には支障がないMCIはこれまで治療薬がなかったため、新薬の実用化により認知症医療の選択肢が増えた。 　22日に投与を受けた患者は軽度認知症。4日に市立三沢病院で、がん診断に使われる精密検査機器「PET（ペット）－CT」を応用した「PET検査」を受け、レカネマブの投与が可能と判断されていた。同病院がレカネマブ投与に向けたPET検査を行うのは今回が初めてで、遠藤恵介・三沢病院事務局長は「認知症患者は全国的に増える傾向にある。受け入れ体制を整え、いつでも対応できるようにしていく」と話した。 　高松院長によると、レカネマブの投与は県内では弘前大学医学部付属病院などで行われているが、全国で青森県が一番導入率が低いという。投与希望者の多くは症状が進み適応外になってしまっているといい、「早期受診や普及啓発がこれまで以上に必要。今後も関係機関と連携していく」と話した。 　◇レカネマブ　エーザイなどが開発したアルツハイマー病治療薬。2023年12月、保険適用された。記憶障害などの症状が出る10～20年以上前から脳に蓄積し、神経細胞を傷つけるきっかけになると考えられているタンパク質「アミロイドベータ」に結合し除去する。使用する場合、PET検査あるいは脳脊髄液検査でアミロイドベータの蓄積を確認する必要がある。投与後もMRIで定期的に検査を行う。