［ソ・ジョンミンのミュージックボックス］

　韓国全土を揺るがしているHYBE（ハイブ）とADOR（アドア）の対立騒動を通じて、よりいっそう鮮明になった事実がある。K-POPの本当の主役は、アーティストではなく製作者とプロデューサーだという点だ。K-POPの土台を確固たるものにした3大企画会社の名前からして、イ・スマン（SM）・ヤン・ヒョンソク（YG）・パク・ジニョン（JYP）の各プロデューサーの名前から取ったものだ。 　今回の騒動では、プロデューサー間も上下関係で分かれているという点が特徴的にあらわれた。ADORの株式の80％を保有するHYBEのパン・シヒョク議長は出資した製作者、ADORのミン・ヒジン代表はグループ「NewJeans」を企画したクリエーターに該当する。ミン・ヒジン代表は一つのレーベルの代表だが、製作者よりアーティストに近いようにみえる。実際のアーティストであるNewJeansよりもさらにアーティストらしい見た目が、今回の騒動を通じてさらに目立つようになった。 　K-POPアーティストの地位はどうか。K-POPの先駆者と呼ばれるソテジワアイドゥルは、自らグループを結成して曲を作り、活動を主導した。一方、本格的なK-POPの開始を告げたH.O.T.は、SMの徹底した企画から出発した。初期のアイドルは、企画された商品にすぎないという冷ややかな視線も浴びた。しかし、実力派アイドルが相次いで登場し、BIGBANG、防弾少年団（BTS）、（G）I-DLEなどのように自ら曲作りをするグループが普遍化し、アーティストとしての地位が固まった。 　NewJeansは新しいK-POPアーティストのタイプだといえる。耳に馴染む音楽とニュートロ（「ニュー」と「レトロ」の合体語）のコンセプトによって、既存のK-POPグループとの差別化に成功した。成功要因としては、常にミン代表の卓越した企画力が挙げられる。メンバーの魅力もまた、彼女らを選んだミン代表の能力として収れんされる。ミン代表は「NewJeansの母」と呼ばれる。芸能番組「ユ・クイズ・オン・ザ・ブロック」（tvN）にNewJeansが出演した際、ミン代表は母親のようにつきそっていた。ミン代表は先月25日の記者会見で、NewJeansを「私の子どもたち」と言った。「私が作った」という点も強調した。特別な愛着の表現だとはしても、NewJeansに受動的所有物というフレームをかぶせたことも事実だ。 　ミン代表の記者会見を見た数日後、三部作のドキュメンタリー『学田、そして裏側のキム・ミンギ』（SBS）の第1部と第2部を続けてみた。財政難で3月に閉館した小劇場「学田（ハクチョン）」のキム・ミンギ代表についてのドキュメンタリーだ。キム・ミンギ氏は「朝露」や「常緑樹」などの曲を作り歌った、優れたアーティストだ。自身のレコード収益をはたいて1991年に「学田」を設立した後、アーティストではなく企画者として生きた。彼は自らを「裏側」と称した。「表側」である俳優と歌手の後ろの暗いところで、黙黙と彼ら彼女らを明るく照らす仕事をした。生活の苦しい無名俳優を体系的に鍛え、自分の月給よりも多い出演料を払った。 　「学ぶ」に「田」の漢字の「ハクチョン」は、苗代を意味する。俳優のイ・ファンイ氏は「キム・ミンギ先生は（俳優が）育ったら送りだし、苗を植えて農作業をするような気持ちで仕事をした。『売れるようになったら早く出ていけ。振り返るな』と言っていた」と語った。そのようにして偉大な俳優になった人たちは、自らキム代表を「師匠であり父」と呼ぶ。キム代表の方から「私が彼らを育てた」とか「私が父」だと言ったことは一度もなかった。 　「表側」のミン・ヒジン代表と「裏側」のキム・ミンギ代表を見て、アーティストを作る企画者の徳性について深く考えてみる。今回の騒動で本当にNewJeansのためになる道は何なのか。 ソ・ジョンミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )