[山口県]校歌で歌われた山は? 県内小中高900校超調査 宇部市の松永さん「記録残したい」
山口県内の学校の校歌に出てくる山、それを「校歌山」と名付けて調べている人がいる。宇部市の元公務員、松永昌治さん(61)。昨年には成果の一部をまとめた著書を出版した。近年、少子高齢化で学校の統廃合が進む中、「消えゆく校歌山の記録を残したい」と調査を続けている。 松永さんは十数年前、知人に誘われて登山を始めた。趣味でさまざまな山を登る中、県内各地にある地元のシンボルとして親しまれている山に魅力を感じ、それらが地域の自然や歴史がつづられた校歌で歌われていることに着目。10年ほど前から独自に調べ始めた。 対象は戦後の六三三四制教育になって以降の小中高校。松永さんの現時点の調べでは、県内には過去を含めて900を超える学校(現存は約520校)があり、校歌が判明したのは約850校。うち500校以上に「校歌山」が登場することが分かった。昭和30~40年代に校歌ができた学校が多く、それ以前の学校では校歌自体が存在しないところもあったという。 校歌の中には、羅漢山(岩国市)や太華山(周南市)、十種ケ峰(山口市)、霜降岳(宇部市)、華山(下関市)など、複数の学校で歌われるような地域を代表する山もあれば、歌詞に出てくるものの山の名前なのか単なる地名なのか分からないものも。松永さんによると、山のほとんどは民地のため地図に名前が載る山はごく一部で、一つの山がさまざまな名前で呼ばれるケースもあるという。時には現在の地図と史書の記述や地名を照らし合わせたり、昔を知る地域の人に聞いたりしながら、地道に特定作業を進めてきた。 昨年4月には、県内に200以上ある校歌山の中から60の山と約300校の校歌などをまとめた著書「山口県の校歌山」(徨山舎)を出版した。山にまつわる歴史や登山ルート、景観や文化財などの見どころを、実際に登山した際の写真付きで紹介。A5判、160ページで税込み1650円。宮脇書店宇部店と徳山店、明屋書店MEGA大内店とMEGA新下関店、モンベル山口店で販売している。 松永さんによると、近年の統廃合で設立された学校の校歌には山が登場しない傾向がある。統合後に校区が広い範囲を包含するようになり、一部の地域の山を校歌に取り入れるのが難しいことが要因とみられる。「校歌山が消えて忘れ去られるのは残念」と記録する意義を感じている。 来年には2冊目の出版を計画中。1冊目に収録できなかった校歌山や学校が多数あり、刊行後に知人から「自分の学校が出ていない」とうれしい苦情も寄せられた。「まだ校歌や校歌山が特定できていないところもあるが、一つずつ分かっていく過程が面白い。もう途中で投げ出せなくなった」と苦笑する。趣味の登山を楽しみつつ調査を続けるつもりだ。