マー君、復活の裏に曲げない変化球
ヤンキースの田中将大投手(26)が現地時間18日、敵地のトロピカーナ・フィールドで行われたレイズ戦に今季3度目の先発、33キロの緩急差つけた新しいピッチングスタイルで7回をわずか2安打、8奪三振で無失点に抑えて2勝目を飾った。相手の裏をかく配球と、新スタイルが成功した裏には、ツーシーム、スプリットの変化を2015年型に修正することによって誤差を少なくした制球力にあった。
マー君のピッチングは明らかに変化していた。 これまで1試合に1球しか使ってこなかった最遅117キロのカーブを10球使った。最速150キロをマークしたフォーシームとの球速差は、実に33キロである。緩急差だけではない。打者が一回りするまで伝家の宝刀、スプリットを封印した。一回、トップバッターのデヘイススに中前打を許した後には、打者15人をパーフェクト。精密と呼びたくなるほどのひとつの四球も出さなかったコントロールと緩急……だが、それも引き出しのひとつでしかない。ピンチになると今度はガチャンとスイッチが入った。 7回、愛妻マッキャンのフェンス直撃の2点タイムリー三塁打で先制点をもらった、その裏だ。先頭のガイヤーにレフト線への二塁打を浴びると、マー君のターボにスイッチオンである。リベラには、146キロのツーシームで空振りの三振。デヘイススには、慎重にスプリットから入る配球。カウント1-1から、外のボールゾーンからストライクゾーンに曲げる117キロのカーブで追い込むと、この試合、最速となる150キロのフォーシームで勝負にきた。それをファウルにされると、スプリット、再び150キロのフォーシームで押したが、最後はスライダーを使ってスイングアウト。球速差と揺さぶりに読みの裏を欠く配球。続くソーザを内野ゴロに終わらせるとガッツポーズまで飛び出た。 「田中投手に対して各打者は、変化球待ちで対応している傾向があります。そこで裏をかかれると、ゴロという結果が増える。今日はカーブも多かったし、相手の傾向などを研究して考え抜いた配球でした」とは、配球の専門家でもある元千葉ロッテの里崎智也氏の分析。 結果的に9点という大量援護はもらったが、7回を投げて、わずか2安打、8奪三振、無四球の素晴らしい85球。ゼロを7つ並べての今季2勝目を米国メディアは、手のひらを返したように「タナカが試合を支配した」「再びエースが帰ってきた」「球威が戻った」と持ち上げた。 マー君自身も「全体的に良かったと思いますし、真っすぐを中心にしてアグレッシブに行けた」と、手ごたえを感じ取っていた。