F1メカ解説|稀代の名車レッドブルRB19とは、いったいどんなマシンだったのか? そのディテールを紐解く
レッドブルのRB19は、マックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスがドライブし、2023年のF1全22戦中21勝という輝かしい成績を残した。これはF1の歴史上、年間の最高勝率記録を樹立するものである。 【ギャラリー】これが鬼才の仕事。エイドリアン・ニューウェイ作のベスト10マシン ただこのRB19は、まったく新しくデザインされたわけではなく、2022年のレッドブルのマシンRB18の進化版である。チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、RB19にはRB18から多くのパーツが流用されていることを明かしている。 ホーナー代表曰く、マシンの最大の変更点は、軽量化にあるという。しかしそれ以外にも、多くの変更が施されていることが、細かく見ていくとよく分かる。
■フロントの車軸位置が若干ながら変更
まず異なっているのは、フロントの車軸の位置だ。RB19の車軸は、RB18よりもほんのわずかながら前進させられている。つまり、フロントタイヤが若干前に移動しているということだ。 この変更は、サスペンションの機能や空力面のパフォーマンスに影響を及ぼすだけでなく、タイヤのパフォーマンスにも影響を及ぼす、重要な要素のひとつだ。 フロントタイヤは、F1マシンの中で最も大きな空気抵抗を生み出すパーツであり、その後方には大きな乱流を生み出す。この乱流がフロアやサイドポンツーンに及ぼす影響は、マシン全体のパフォーマンスにとっても重要だ。つまりフロントタイヤが前方に移動したことで、空力的な影響も変わっているはずだ。 また、レッドブルが取り入れた独特のサスペンションレイアウトにも注目しておきたいところだ。 レッドブルはRB18のフロントサスペンションアームのアッパーウイッシュボーンを、前後で高さを大きく変えてきた(イラスト丸の中で黄色く色付けした部分)。この傾向は、現在では他チームも踏襲し、トレンドのひとつとなっている。このレイアウトを採用することで、ブレーキング時等にマシンのフロント部分が沈み込んでしまうのを防ぎ(アンチダイブ)、パフォーマンスを安定させるのに役立つ。現世代のF1マシンにとってこれは非常に重要だ。 もちろん、サスペンションアームの断面形状を活かした空力面の効果も考慮しなければならない。サスペンションは今や、マシンの姿勢を制御するためだけのパーツではなく、気流を制御するためにもフル活用されているのだから。