不動産業界で横行する「不誠実な商習慣」に国がメス、それでも解決には程遠いワケ
さらに「囲い込み」の解消に立ちはだかるのが、立証の難しさだ。不動産会社による故意の行動なのかが不明瞭で、客観的な証拠が残りにくい。国交省が取引のルール化を決めたところで、「●●する行為が囲い込み」という明らかな線引きもできない現状が、「囲い込み」問題の複雑さを物語っている。 囲い込みを立証し、根絶するためには、規制強化に加え、業界全体の意識改革が不可欠となる。不動産仲介の現場にいる営業担当者が、いま一度顧客視点に立ち返り、倫理観を養い、業界の健全化を目指していくことも大切だ。 ● 売り主のみならず買い主の デメリットも大きい「囲い込み」 「囲い込み」は売り主だけの問題ではない。例えば買い主のあなたにとって、気になる物件があったとしよう。早速不動産会社に物件情報を尋ねても、担当者はメリットしか伝えない――それはそうだろう。担当者は売り主から売却の依頼を受けて売却活動を行っており、成約することが目標だ。そのため、物件のデメリットは積極的に伝えず、その結果、買い主は必要な情報を得られないまま、購入を決めてしまうリスクがある。 また、買い主が、不動産のプロからみた物件のアドバイスを得たいと思っても、「物件を売りたい」担当者からは正しい情報が得られない可能性がある。したがって、自分にとってベストな物件なのかを判断する上では、担当者の意見を鵜呑みにせず、冷静かつ慎重に考えることが必要となるだろう。 最近ではポータルサイトなどから不動産情報に簡単にアクセスできるようになった。買い主が効率的に物件情報を得られるからこそ、その裏側には「囲い込み」のリスクがあることにも注意しておきたい。そして売り主・買い主どちらの立場であっても、担当する不動産エージェントの出会いが良い取引になるかどうかの鍵となる。 その不動産エージェントは、買い主にとってのメリット・デメリットを含めた不動産の情報、アドバイスをくれる人だろうか。 また、売り主の場合、その不動産エージェントは、より早くより高く売却するために、自分たちの会社のネットワークだけでなく、他の不動産会社のネットワークも含めて、今市場の中にいる中で一番いい条件で購入する買い主探しに尽力してくれる人だろうか。 「囲い込み」などのリスクを回避し、不動産取引を成功させるためには、不動産会社や物件情報にばかり目を奪われず、信頼できるエージェントを見つけることが重要だ。 つまるところ「人(エージェント)」から選ぶことが、不動産取引成功の近道となる。まずは売り主・買い主それぞれの立場を理解し、フラットな視点から最善の選択をサポートしてくれるエージェント探しからスタートしてみてはいかがだろうか。 (株式会社さくら事務所創業者・会長 長嶋 修) さくら事務所公式サイト https://www.sakurajimusyo.com/
長嶋 修