中絶は「人類の汚点」と発言の米極右系共和党候補、態度を軟化
ケント氏が態度を軟化させた理由
ちなみに、女性の身体的自主性を制限する州の規制と、過去の奴隷制度の間に関係性を見出している法律学者は実際に存在する。『Policing the Womb』の著者でもあるジョージタウン大学法学部のミシェル・グッドウィン教授は以前こう記している。「妊娠可能な女性や若い女性に対し、州が本人の意思に反して妊娠継続をむりやり強要するのは、生身の人間を所有物とし、保育器にしているのと同じだ。そうすることで、州議員は女性たちの身体をむりやり州のいいなりにさせている」。 先日ローリングストーン誌の取材に応えたグッドウィン教授は、アメリカでもとくに厄介な中絶規制が存在する州が、かつて奴隷制度の維持を主張していた点を指摘した。「『へえ、だから何?』と言う人もいるでしょう。明らかに奴隷制の本質は、個人の自主性や黒人の人間性を否定することでした」とグッドウィン教授。「今現在、こうした法律があらゆる人種の女性に悪影響を及ぼしているのは明白です。ですがポイントは、立憲民主主義で暮らす今、憲法で認められた人間性を一部の集団に認めることを回避する手段が見つかったのだとすれば、その州の立法府や裁判所に身体記憶として残っていたということです」。 これらの州では、黒人や女性の権利に対する拒絶が内部で清算されていなかったとゴールドウィン教授は続けた。代わりに市民権法や投票権法、ロー対ウェイド判決といった形で連邦政府が介入し、少なくとも一時的にこれらの州に慣習をむりやり改めさせた。 一方、ジョー・ケント氏が下院議員に立候補しているワシントン州では(Cook Political Reportでは現時点で互角の戦いと位置付けられている)、これまで連邦法で定められていた中絶制限期間、つまり「母体外生存可能性」が生じる前までなら、中絶手術は容易に受けられる。この点について、かつてケント氏は改正を望む意向を示し、連邦レベルでの中絶禁止に加え、ワシントン州での中絶禁止も支持すると表明していた。 同氏が最近態度を軟化させたのは、ワシントン州の世論調査の結果と呼応している。中絶の権利を覆したドブス判決の直後に公表された世論調査によると、ワシントン州の有権者の63%が判決に反対すると回答。支持するという回答はわずか26%だった。もっとも、今後ケント氏が中絶問題に関して世論を考慮に入れるかどうかは何とも言えない。 2022年のインタビューで同氏はこう発言している。「生きるチャンスを望んでいるかと胎児に意見を聞く技術が出てこない限り、賛同はできない……子どもの命を奪っておいて、それを女性の選択だと? そんな考えは全く理解できない」。
Tessa Stuart