YOASOBIが“お互いに尊敬するところ”とは「ikuraは喉の運動神経が良い。無茶ブリにも的確に応えてくれる」
成田悠輔と愛すべき非生産性の世界 対談:ミュージシャン・YOASOBI
世界を駆動するのは、論理や経済ではない。データやアルゴリズムを駆使して人間と向き合ってきた成田悠輔は、今は〝非生産的〟といわれる分野にこそ人間の本質的な欲求が表れると考えている。それを検証する旅として始まった本企画、今回は音楽ユニットのYOASOBIをゲストに招いて対談が行われた。今年『アイドル』が米ビルボード・グローバル・チャート〝Global Excl. U.S.〟にて日本の楽曲としては史上初の1位を獲得し、世界中で〝バズり〟を巻き起こしたふたりが見据える、J-POPや音楽の未来とは? 【動画を見る】成田悠輔×YOASOBI 『Idol』世界的ヒットの自己分析
歌い手であり作り手同士 お互いに尊敬するところとは
成田 おふたりから見て、真似したくなるが真似しきれない〝YOASOBIというジャンル〟の核心はどこにあるのでしょうか? i 私たちは「小説を音楽にする」というコンセプトで結成したユニットですし、そこがオリジナリティであることは今後も変わらないと思います。でもAyaseさんはジャンルレスで音楽を手掛けるし、私もアイドルみたいに歌うこともあれば、シリアスに歌う曲もあったりと、アウトプットに関しては何も縛りを設けずにやっている。結局は「AyaseとikuraであることがYOASOBIの音楽です」という話になる気がします。 成田 ikuraさんは作詞作曲もされますよね。ikuraさんから見て、作曲者としてのAyaseさんはどこがすごいですか? i Ayaseさんは漠然としたイメージを音にする能力がすごいです。例えば『アイドル』であれば、「推しを崇拝している世界観を表現したい」というアイデアから始まって、ゴスペルのような合唱を入れてみようとか、必要な音を導き出すことができるんですよね。どんな題材でも脳内に浮かんだイメージを音にして、毎回違う彩り豊かな色を持った新曲を作れるところをとても尊敬しています。 A 僕は割と色と音が結びついていて、例えば10代の頃に見た夏の青空のことを音にしたいなと思った時、同じ色の音を取ってこようという感じで。ショパンのエチュードは紫色のイメージとか、バッハの曲は僕の中で大体ターコイズブルーだったりします。なので楽曲のイメージの色をアニメーターさんに伝えてMVで活かしてもらうこともあります。 成田 共感覚者ですね。逆に歌い手でもあるAyaseさんはikuraさんの歌のどこに魅力を感じますか? A ikuraは脳内でイメージしたことを歌声として表現する能力がものすごく高いんですよ。僕の中で、もともとソロで活動していた幾田りら(ikura)の声には何色にも染まっていない透明な魅力があり、それがYOASOBIを結成するきっかけにもなりました。レコーディングの際に僕は「色で例えると青っぽいイメージ」とか、我ながら無茶ブリするんですけど、ikuraは的確に応えてくれる。喉の運動神経が良いのだと思います。 成田 やっぱりアスリートですね。 A 「こういう歌い方をしたら可愛いんじゃない?」とか、伝えたことを咀嚼して正解を出すまでの速度がすごく速いんですよ。小説を音楽にするためにはいろんな主人公の心情を表現する必要がありますし、ikuraほどの適任者は他にいません。