「スポーツ庁」新設へ 東京五輪以外にも役割はあるの?
「今回は、一本化する弊害の方が大きいと考えました。例えば、都市公園は運動の場としても重要ですが、緑地保全や防災面、景観維持といったようにさまざまな機能があります。都市公園は国土交通省の管轄ですが、ここからスポーツに関する部分だけを抽出してスポーツ庁に移管するのは、都市公園全体の管理として現実的ではありません。同様に、外交に関わる交渉にはやはり外務省が長けておりますので、スポーツに関わる部分だけをスポーツ庁に移すことにメリットがないからです。そのため、スポーツ庁は司令塔的に関係各省と連携する形で、基本政策の立案や調整を進めていきます」 そして、こういった司令塔としての役割を果たすのが長官の存在です。今回、長官には元スポーツ選手の民間人の起用が有力視されています。これは、いわゆる「役人のあがりポスト」ではなく、日本のスポーツを引っ張る存在として、スポーツに精通しているのはもちろん、リーダーシップとガバナンス能力を兼ね備えた人が求められているからだそうです。 スポーツ庁の根幹には、2011年に定められたスポーツ基本法の「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利」という考えがあります。当面は、東京五輪・パラリンピックに向けた選手強化の育成に注目が集まりそうですが、長期的に見ればスポーツに対するすそ野を広げ、スポーツ人口を増やしていくことが重要な課題。日本のスポーツ分野の発展をどうデザインしていくのか、スポーツ庁の今後の取り組みに期待が高まります。 (南澤悠佳/ノオト、取材協力/文部科学省スポーツ・青少年局)