イーサリアムの厳しい現実
レイヤー2の台頭:諸刃の剣
L2プラットフォームは、トランザクションをメインチェーン(L1)からより高速で安価なネットワークに移動させることでイーサリアムブロックチェーンを拡張させるように設計されている。当初、L2はL1を補完し、ベースチェーンを遅延させることなく、より多くのトランザクションを処理できるようにした。これは、使用量が多い際にバランスをとるために圧力を解放するバルブのようなものだ。 しかし、2024年に「ブロブ・スペース(blob space)」が導入されたことで、L2はL1 でのトランザクションをはるかに安価なコストで決済できるようになり、高額なL1の手数料を支払う必要性は減少した。より多くのアクティビティがL2に移行するにつれて、EIP-1559の目的である供給量のバーンが減少し始め、ETHの供給を抑制する圧力が弱まった。 イーサリアムブロックチェーンは、ETHの価値を支えるために高額なL1手数料を生みだしているという現実には、今や暗雲が立ち込めている。L1の取引手数料は着実に低下しており、各レイヤーで提供されるサービスの違いはなにか、今後のL1の手数料を取り巻く環境をけん引するものは何かについて、疑問が生まれている。
今後の道:バーンの再興あるいは新たな現実への適応
これらの課題はあるものの、L1トランザクションの需要を回復し、ひいてはETHの価値を回復させる潜在的な手立ては存在する。 1つの選択肢は、L1のセキュリティと信頼性に依存する高価値のユースケースを開発することだが、現在のトレンドを考えると、近い将来にこれが実現する可能性は低いようだ。もう1つの可能性は、L2の普及が急速に進み、取引高の増加によって減少した手数料が補われることだが、これには短期的な予想を超えるようなL2の大幅な成長が必要となる。 最も可能性が高く、おそらく最も物議を醸す解決策は、ブロブ・スペースの価格を変更してL2の決済手数料をあげることだ。これでL1でのバーンがいくらか回復するが、イーサリアムブロックチェーンの最近の成功の鍵であり、エコシステムとして代替的なプラットフォーム(ソラナ、バイナンスチェーンなど)と競合するパワーを高めてきたL2のエコノミクスを混乱させるリスクがある。
ETHの不確かな未来
L2はイーサリアムブロックチェーンを拡大させてきたものの、ETHの価値とそのユーティリティを結び付けるメカニズムを混乱させた。投資家にとって、これはETHの将来が、イーサリアムブロックチェーンがイノベーションと健全な経済ポリシーの維持といかに両立させるかにかかっていることを意味する。 現時点では、ETHへの投資は不安定であり、イーサリアムコミュニティが今後の方向性を決定するうえで、リスクは高いままだ。 |翻訳:T.Minamoto|編集:CoinDesk JAPAN編集部|画像:Shutterstock|原文:Ethereum's Changing Landscape
CoinDesk Japan 編集部