米大統領選を揺るがすXファクターは「あのファミリー」の「反ワク論者」…?カオスな米国社会の症候
まるで「ロイヤルファミリー」
昔トランプ、今ケネディ。陰謀論の所在も移りゆく。2020年にQAnonがいた場所には今、Anti-Vaxxer(反ワクチン主義者)が鎮座する。トランプと違ってケネディ・ジュニアは、至って真面目にワクチンや5Gの陰謀論を触れ回っている。その突飛な言動の由来は、どうやら伯父と実父を暗殺され、国家的陰謀の影にローティーンの頃から苛まされたから。陰謀の存在は彼の中ではリアルであり続けている。 【写真】中国の「麻薬犯罪」を暴露した米下院報告書のヤバすぎる中身 2024年3月17日、アイルランド系カトリックの祭りであるセントパトリック・デイ当日、ジョー・バイデン大統領を「ケネディ・ファミリー」が賑やかに囲んだ写真が公開された。ケネディ家といえば、王のいないアメリカで、まるでロイヤルファミリーのように扱わるセレブリティである。そのケネディ一族が総勢50名近く、バイデンを真ん中に周りを取り囲んだ。 バイデンの傍らには、未来のケネディ家を担うであろう、小さな子どもたちも連なっていた。後日、彼らケネディ家の人びとは、今年秋の大統領選に向けて、一族を伝説にした第35代大統領のジョン・F・ケネディ(JFK)に続き、二人目のカトリックの大統領となったバイデンの支持を表明した。民主党を代表する「王族(ロイヤルファミリー)」として期待された振る舞いだった。 しかし、その写真には一人重要な人物が欠けていた。JFKの甥で、今年の大統領選にバイデンの対抗馬として出馬を決めたケネディ家の異端、ロバート・F・ケネディ・ジュニア(RFK Jr.)である。環境問題の弁護士から反ワクチン運動の旗手となったケネディ・ジュニア――以後、RFK Jr.のことをこう略称する――は、コロナ禍において高まった反ワクチン運動の勢いを得て、大統領選に出馬するに至った。 現職(=バイデン)対前職(=トランプ)という、2020年の再戦となったことで今ひとつ盛り上がりに欠ける今年の大統領選の中、ケネディ・ジュニアは、ケネディ家のブランド力も含めて台風の目と化している。もちろん共和党と民主党以外の第3党から大統領が誕生するとは誰も思っていないが、しかし、ケネディ・ジュニアの動向は、民主党と共和党が拮抗する接戦州――ペンシルヴァニア、ミシガン、ウィスコンシン、ニューハンプシャー、ジョージア、アリゾナ、ネヴァダの7州――で、バイデンとトランプの得票数に影響を与え大統領選の行方を左右しかねない「Xファクター(不確定要因)」として危惧されている。支持率調査でケネディ・ジュニアは二桁の支持率を得ることも多く、第3党の候補者としては抜きん出ている。