「優しくスッと心に入ってくる」必殺シリーズ取材、高鳥都さんが語る火野正平さんの魅力
■走る姿が絵になる人
──そのほか、印象的なシーンは
「定番なのが、下駄を鳴らして一生懸命走っている姿だ。火野さんにインタビューしたとき『また走っている姿を見たい』と言ったら、『73歳やで』と笑っていた。しかしよく考えるとNHKBSの人気番組『にっぽん縦断 こころ旅』では自転車で、今年8月公開の映画『ラストマイル』では軽トラックで走っていた。いろいろと走る姿が印象的で、絵になる人だった」
「ラストマイルでは宅配ドライバー役。新しい『鬼平犯科帳』では主人公、長谷川平蔵が使う密偵の『彦十』役。歳を取ると偉い人物の役をやるようになる俳優が多い中、火野さんは最後まで主に市井の人を演じ、視聴者の心に残った。さらに演技が円熟味を増していくところだったのに残念だ」
──インタビューで話した印象は
「偉ぶるようなことはなく、気さくな感じだった。人気ドラマ『傷だらけの天使』(昭和49年)で水谷豊さんが演じたアキラ役は当初、火野さんが演じる予定だったという裏話にも答えてくれた。火野さんはモテることで有名だが、話していると、『これは惚れる』という感じ。優しさが伝わるし、スッと心の中に入ってくるような印象があった」(聞き手 高橋寛次)
高鳥都(たかとり・みやこ) 昭和55年生まれ。平成22年よりライターとしての活動をスタートし、雑誌を中心にルポやインタビューを執筆。著書に『必殺シリーズ秘史 50年目の告白録』『必殺シリーズ異聞 27人の回想録』『必殺シリーズ始末 最後の大仕事』『あぶない刑事インタビューズ「核心」』、編著に『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』『必殺仕置人大全』があり、『漫画+映画!』ほか共著多数。最新刊は今年10月に発売された『必殺シリーズ談義 仕掛けて仕損じなし』。