オーバーステアか四輪ドリフトか プジョー205 vs シトロエンAX(2) 平凡な小型車から最高の面白さ
助手席に1人座っただけで動きが鈍くなる
キャブレター・エンジンだから、温度によって始動性が悪くなる。アナログな時代のホットハッチだという実感を高め、ますます好きになる。 車内空間は、205 ラリーと同じく見た目以上に広い。AXなら、大人4名が快適に過ごせるだろう。しかし、それでは走りの魅力が大いに削がれる。助手席に1人座っただけで、重さは約10%増し。明らかに動きが鈍くなる。 この時代のホットハッチは、平凡なコンパクトカーから最高の面白さを引き出した、黄金期にあった。ドライバーには、一定の信頼がおかれていた。それでも、楽しいと絶賛された特性は、危険だという評価へ変化していった。 クラシックカーとして時効が成立したような今では、再びそれが魅力になっている。205ラリーへ最も近いシトロエンは、1991年限りのAX スポーツだという人もいる。数は極めて少なく、出てくれば相当にラッキーだ。 今回の比較では、優劣を付ける目的はないものの、205 ラリーが優れることは間違いない。ピニンファリーナ社が手掛けたスタイリングと相まって、急速にコレクターズ・アイテム化してもいる。 数年前の英国でも、TU24ユニットを積んだ本物の205 ラリーは11台しか存在しなかった。その中の数台は、サーキットやラリーステージで、まだ現役として駆け回っているようだ。 同時に、AX GTにも感銘を受けた。現実世界では同等に速く、乗り心地は快適。オリジナル状態を探し出すのは、205 ラリー以上に難しいかもしれないが、筆者も1台、ツインキャブレターのGTが欲しくなってしまった。 撮影:マルコム・グリフィス ※この記事は、2017年1月に執筆されたものです。
プジョー205 ラリーとシトロエンAX GT 2台のスペック
■プジョー205 ラリー(1987~1992年/英国仕様) 英国価格:7810ポンド(新車時) 生産数:3万111台 全長:3708mm 全幅:1572mm 全高:1295mm 最高速度:189km/h 0-97km/h加速:9.6秒 燃費:10.6km/L CO2排出量:-g/km 車両重量:790kg パワートレイン:直列4気筒1294cc 自然吸気SOHC 使用燃料:ガソリン 最高出力:103ps/6800rpm 最大トルク:12.2kg-m/5000rpm トランスミッション:5速マニュアル(前輪駆動) ■シトロエンAX GT(1988~1992年/英国仕様) 英国価格:7399ポンド(新車時) 生産数:240万台(AX合計) 全長:3531mm 全幅:1600mm 全高:1340mm 最高速度:180km/h 0-97km/h加速:9.2秒 燃費:11.5km/L CO2排出量:-g/km 車両重量:722kg パワートレイン:直列4気筒1360cc 自然吸気SOHC 使用燃料:ガソリン 最高出力:86ps/6400rpm 最大トルク:11.8kg-m/4000rpm トランスミッション:5速マニュアル(前輪駆動)
ポール・ハーディマン(執筆) 中嶋健治(翻訳)