【菊花賞】二冠馬を破ったライスシャワー、伏兵デルタブルース…牡馬クラシック最終戦を「記録」で振り返る
今月この世を去った名ステイヤー・デルタブルース
過去、幾度となく波乱の決着となってきた当レース。期間内の単勝オッズをランキングすると、3位がヒシミラクル(36.6倍)、2位がソングオブウインド(44.2倍)、1位がデルタブルース(45.1倍)となっていた。上位6頭のうち3頭(ザッツザプレンティ、デルタブルース、スリーロールス)がダンスインザダーク産駒というのも面白い特徴のひとつと言えるだろう。 3位のヒシミラクルは3歳5月に初勝利をあげ、そこから2、1、3、3、1着とコンスタントに走りながら昇級。初めて挑んだ重賞の神戸新聞杯では6着に敗れたものの、続く菊花賞では10番人気の低評価をひっくり返して勝利した。翌年には天皇賞(春)と宝塚記念を連勝するなど勝負強さを見せた1頭だった。 2位のソングオブウインドも初勝利は3歳4月と遅め。こちらはデビューから馬券圏内を外さない安定感はあったものの、その年の菊花賞は二冠馬メイショウサムソンをはじめ皐月賞2着、ダービー3着のドリームパスポート、条件戦から3連勝してダービー2着となったアドマイヤメインなど、世代の実力馬が集結したこともあり低評価に甘んじていた。 引退後は種牡馬となったソングオブウインド。現3歳世代では、目下2連勝中の素質馬コスモブッドレアが母父ソングオブウインドである。父はゴールドシップ、母母父はマルゼンスキーといかにも菊花賞で見たかった血統だが、残念ながら実現せず。それでも今後の活躍に期待がかかる。 そして1986年以降の菊花賞を最も高い単勝オッズで制したのがデルタブルース。こちらも3歳4月に初勝利をあげたものの、次走の青葉賞では13着と惨敗。ここでダービーの夢は断たれたが、オークスデーの東京競馬場で2勝目をあげると10月には条件戦の九十九里特別で3勝目をあげて勢いそのままに同月の菊花賞に乗り込んだ。 当時は武豊騎手とハーツクライのコンビが1番人気となり、さらに地方の雄コスモバルク、良血のダービー3着馬ハイアーゲームなどが参戦。ほか、スズカマンボやカンパニーなど骨のあるメンバーがそろったなか、cは大外8枠18番と厳しい枠からの発走だった。 レースでは序盤から前に行き、1周目のスタンド前では内ラチ沿いのポジションに入った。道中は5番手を進み、3~4角で動き出すと、直線で力強く抜け出し2着に0.2秒差をつけて快勝した。 次走ジャパンCで3着、有馬記念でも5着に入るなどその後もGⅠ戦線を賑わす傍らで、2005年のステイヤーズSを勝利するなどステイヤーとしての資質も見せ続けた。5歳時には同じく角居勝彦厩舎のポップロックとともにオーストラリアへ遠征。初戦のコーフィールドカップで3着となると、大目標であるメルボルンカップで見事に勝利をあげた。加えて、ポップロックも2着で日本馬のワンツーという記録的な勝利。今もなお輝く栄冠である。 デルタブルースは引退後、乗用馬などを経て2021年からは岡山県のオールドフレンズジャパンで余生を送っていたが、今月の8日に蹄葉炎によりこの世を去った。記憶にも記録にも残る名馬。今年の菊花賞は、デルタブルースにも思いを馳せながら見守りたい。 ライタープロフィール 緒方きしん 競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
緒方きしん