鈴木康友氏が語る「道州制」実現の道筋 ...地方から変革する意義とは?
前浜松市市長で、現在は静岡県知事を務める鈴木康友氏は、長年にわたる経験に基づいて「道州制」の必要性を説く。日本を分権国家に戻す意義、実現のための道筋とは。書籍『市長は社長だ』より紹介する。 【図表】浜松市の財政の健全性は? 政令指定都市での比較 ※本稿は、鈴木康友著『市長は社長だ』(PHP研究所)から一部を抜粋・編集したものです。
日本を変える「道州制」の実現
松下政経塾の生みの親である松下幸之助氏の掲げた大きな目標の一つに、道州制の実現があります。すでに半世紀以上前に、明治以来続く日本の中央集権的な統治構造を変えなければ、日本の活力が失われていくことに気づいていたのですから、恐るべき慧眼です。 私が知っている限り、松下氏と同じ問題意識を持ち、国を変えようと最も行動した人物が橋下徹氏です。橋下氏は、日本の統治構造を根本から変えないとだめだということで、その先駆けとして大阪都構想の実現に奔走されました。そして大阪都実現の暁には、道州制を目指し、関西州を生み出すことが最終目標でした。 しかしながら住民投票で否決され、大阪都構想が幻に終わってしまったことが何とも残念です。しかもけじめをつけて橋下氏も政界を引退されました。二重に残念でなりません。 橋下氏は、松下政経塾の後輩の村井嘉浩・宮城県知事と「道州制推進知事・指定都市市長連合」の共同代表を務められ、経済界や政界への働きかけもされていました。橋下氏が引退された後は、私が村井知事と共同代表を務め、活動を続けてきました。 一時期、経団連や経済同友会などの経済団体が活動に加わったり、国会でも道州制基本法が上程寸前まで行きかけましたが、反対が根強いということでお蔵入りしてしまいました。その後は道州制の議論が沈静化しています。 日本のように人口規模が1億2000万人もある巨大な国を、中央政府が一律にコントロールしているような国家は他に見当たりません。巨大国家は米国のように、多くが連邦制を採用しており、地方が自主性をもって自治を確立しています。 かつて国の改革で話題となったニュージーランドは、人口400万人で静岡県と同じくらいの規模ですし、北欧の優等生フィンランドは北海道と同じ規模です。日本の県くらいの規模の国は、世界に数多くあります。道州制で国を分割しても、決して小さすぎることはありません。 道州制の細かな議論は割愛しますが、私たちの目指す道州制は、道州に国のほとんどの機能を移管し、国は防衛や外交など、国家として果たすべき機能だけを担うというものです。 当然、経済政策などはそれぞれの州が行い、課税自主権も担保しますので、地域格差も生じます。しかしそれは善政競争の結果であり、格差を乗り越えようとする努力によって、さらにそれぞれの地域が発展します。結果的に国全体として活力が生まれます。 道州制は明治以来の国の形を変える大改革です。明治維新が分権国家であった幕藩体制を壊し、中央集権的な国家につくり変えた改革であったのに対し、道州制はかつての分権国家に戻す取り組みです。 この大改革を明治維新のような武力革命ではなく、民主的な手続きで行うわけですから、世論形成も含めて大変な努力が必要です。しかし私はこれを実現しなければ、日本の未来はないと思います。道州制実現に向け、再び機運が盛り上がることを念願してやみません。