11月にも日中協議 中国の「ガス田開発」活発化の真意は?
東シナ海でのガス田開発をめぐり、再び日本と中国のさや当てが始まっています。日中中間線付近でガス田開発を活発化させる中国に対し、日本政府は開発の中止を求めていますが、中国側は「一方的な開発ではない」として拒絶する考えを示しました。日中はこの問題を協議するため、11月に北京で「高級事務レベル海洋協議」を開く見込みです。また11月1日で調整中の李克強首相との日中首脳会談でも、南シナ海進出問題と合わせて議題になりそうです。日本側には「軍事拠点化」への懸念もある中、中国のガス田開発の真意は何なのか。日中関係に詳しい元外交官の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【図】“陸と海のシルクロード”中国の「一帯一路」構想とは?
新たに12基の海上プラットフォーム
今年7月、菅義偉官房長官は、東シナ海の日中中間線の中国側海域で、中国が海上プラットフォームの建設を進めていると指摘し、東シナ海のガス田開発施設関連の資料を公表しました。海上プラットフォームとは、海底から石油や天然ガスを採掘するために海上に構築された構造物で、機械の保存や労働者の滞在にも使われます。 日本政府は2013年6月までに、中国が「白樺」「樫」「平湖」および「八角亭」の4か所のガス田を開発しているのを確認していましたが、今回発表された資料によると、それ以降12基の海上プラットフォームが建設されていることが分かります。 場所はすべて日中の中間線より中国側で、日本側に入ってきていませんが、なぜ中国はそのように多数の海上プラットフォームを相次いで建設するのか、注目を集めました。
「中間線より中国側」「地下でつながっている」
この海域でのガス田開発は、日本と中国の境界線をどこに引くかについて両国の意見が違っているため実行できないでいましたが、2007年、両国の首脳は境界画定が実現するまでの過渡的期間、「双方の法的立場を損なうことなく協力する」ことにつき意見が一致しました。翌2008年6月には、(1)両国は共同開発区域を設定し、その中で共同開発を行なうことと、(2)中国企業による白樺(中国名:「春暁」)ガス田開発に日本企業が参加することについて原則的に合意しましたが、その後、共同開発地点の特定も日本企業の白樺ガス田開発への参加も実現しないままで推移してきました。 この間、中国側は「白樺」以外に、「樫」「平湖」および「八角亭」のガス田を独自で開発してきました。いずれも中間線より中国側寄りであり、中国としては“日本側の主張を尊重して”とは言いませんが、何も問題はないと主張しています。今回公表された12基のプラットフォームもこれまでと同様、中間線より中国側にあります。 これに対し日本は、ガス田は地下で日本側とつながっている可能性があり、中間線より中国側であっても一方的に開発するのは認められないと主張しています。また、最近の日本政府の発表に刺激されてか、中国側には海上プラットフォームを軍事的に利用しようとする意図があると指摘する声も日本で上がっています。