国産コーヒーの発祥地は沖縄だった 1875年、小笠原諸島より先に移植 空閑睦子氏の論文が定説を覆す
[沖縄コーヒー ルーツを探る] 国産コーヒーのルーツは沖縄にあった-。日本で初めてコーヒーを栽培した地が、通説で知られる小笠原諸島ではなく那覇市周辺であることが明らかになった。雑誌「四季の珈琲」編集責任者の空閑(くが)睦子氏が明治時代の農学者の著書など複数の文献を発掘して再評価し、コーヒー栽培の歴史に関する論文を発表した。定説を覆す発見として業界関係者の間で驚きが広がり、県内農家からは「県産コーヒーを盛り上げるきっかけになる」と期待の声が上がる。(政経部・大川藍) 【写真】1875年に沖縄へコーヒーが移植され、順調に育っていたことを記す河原田盛美の著書「琉球備忘録」 ■明治政府の榎本武揚が提案 これまで日本でコーヒー栽培のルーツは1878年の小笠原諸島とされてきた。一方、論文はその3年前の75年、明治政府で農商務相や文相など要職を務めた榎本武揚(えのもとたけあき)による政府への提案をきっかけに、オランダ公使を通じてコーヒーの苗が琉球藩に移植されたと指摘する。 輸入された苗木は112本。75年に政府から琉球藩内務省出張所へ出向した農学者の河原田(かわらだ)盛美(もりよし)は「コーヒーの苗木を含む熱帯植物が移植後、沖縄で順調に育っている」と政府に報告している。 ■琉球国王が栽培に関与 河原田の著書「琉球備忘録」や榎本の建議書は、こうした内容を鮮明に記録。論文を執筆した空閑氏は「琉球最後の国王である尚泰がコーヒーの栽培に関与した記録も残っており、とても興味深い」と話す。 沖縄は気温や降雨量が栽培に適した「コーヒーベルト」の最北端に位置し、コーヒー生産が現在も行われている。県内の生産量は少ないが、農家からは「コーヒーのルーツが沖縄にある歴史が広く知られるようになれば、県内のコーヒー産業がもっと盛り上がる」と期待する声が上がる。 本部町の伊豆味地区には19世紀ごろに植えられたとみられる古木が今も残る。古木を守り、産業を盛り上げる動きも始まっている。