【漫画家に聞く】人の心がわからない少年とわかる少年、出会ったらどうなる? 尖ったSNS漫画に見る“思考実験”
人は互いのことをどれだけ理解できるだろうか。当然、その人や相手によってグラデーションがあり、理解し合えることも、まったく理解し合えないことも、理解できた気になることも、理解できないと思い込むこともある。それでは、人の心が正確にわかってしまう人間と、全くわからない人間が出会ったとしたら、どんな関係を築くだろうかーー。 『人の心がわからない少年×人の心がわかる少年の話』 12月9日にX上で公開された創作漫画『人の心がわからない少年×人の心がわかる少年の話』は正反対の2人が惹かれ合い、それぞれの思いが複雑に交差する衝撃的な作品だ。生と死というテーマを含むため閲覧には注意が必要だが、ファンタジーを含みながら、ある種の思考実験が展開されていると読むこともできる。 本作を手掛けたのは、小学生のころに『まもって守護月天!』(エニックス)にハマり、自分オリジナルキャラクターを作ってノートに漫画を描いていたという颯月ナクルさん(@satsuki_nakuru)。その後は趣味で漫画を描き続けていたが、プロの編集者に自身の同人誌を見てもらったことをキッカケに、最近になって本格的な漫画制作に取り組むようになったという。そんな颯月さんにモヤモヤとドキドキを併せ持った本作を描いた理由など、話を聞いた。(望月悠木) ■好きを詰め込んだキャラ ――『人の心がわからない少年×人の心がわかる少年の話』を制作した時の状況を教えてください。 颯月:過去にコミティアで発行した同人誌をXに今回アップした感じです。当時はオリジナルの漫画をちゃんと完成させたことがなく「自分もオリジナルの漫画を描いてみたい!」と思って制作したことがキッカケでした。初めて完成させたオリジナルの作品です。 ――人の心がわからない少年と、人の心がわかる少年の2人を軸にした理由は? 颯月:「思いついたので描いた」というごく単純なものです。「何か具体的なものから着想を得た」というより、「こういうキャラクターやカップリングが好きだ!萌える!」という気持ちで描きました。 ――地口と颯木の2人もまさに“好き”から生まれたキャラなのですか? 颯月:そうです。相互不理解系のキャラが好きなので、地口は『めだかボックス』(集英社)の球磨川禊、『スカイブルー』(スクウェア・エニックス )の王紅玉、『魔法使いの弟子が笑う時。』(スクウェア・エニックス )の生江桜歌などの影響を受けていると思います。見た目は『ソードアート・オンライン』(KADOKAWA )のキリトのような可愛い見た目にしようと思っていました。 ――颯木はどうですか? 颯月:颯木も好きなように描いきました。ただ、現実的な意味で空気を読めて人から好かれているような人でも「実は疲れているのではないか」と頭に浮かんだことが影響しているようにも思います。 ■パッションやリビドーを優先 ――終始2人の心の揺れ動きが描かれている内容でした。とはいえ、バトルものや恋愛ものとは違い激しい展開を作ることが難しく、読者の興味を惹き続けるためにいろいろ配慮したのでは? 颯月:「最後まで読んでもらうため」というよりは、「まず1ページ目すら読んでもらえるかどうか」がわからない状態でした。内容を工夫したことはモチロンですが、同人誌を発行する際は、表紙を頑張って描いたりサンプルを多めに載せたりして、できる限り興味を持ってもらえるように配慮しました。結果につながったかはわかりませんが、出展後は感想などもらえてとても嬉しかったです。 ――颯木が死んだことを聞かされた時、クラスメイトたちの声がページいっぱいに溢れていました。その一方で、颯木が「本当に何もわからないんだ」と絶望しているページはある意味“殺風景”でした。動的なカットと静的なカットが交差する緩急の効いた作画でした。 颯月:正直緩急を計算して描いているというよりは、パッションやリビドーを優先して感覚的に描いています。「いっぱい文字が並んでいたらインパクトあるかな」とか、「ここを顔のアップにすれば面白いかな」とか好きな絵を好きなように描いている感じです。自分の好きな感覚で描いているのですが、テンポは気にしていて、それが緩急につながっているのかもしれません。 ――最後に今後の目標はなんですか? 颯月: ありがたいことに今年から電子BLコミックで連載を持つことになり、現在鋭意制作中です。今後、Xやpixivでお知らせする予定なので、チェックしてもらえると大変嬉しいです!
望月悠木