Akiが語る、消せない「過去」を包み込む、ディープな歌声のルーツ
2022年からTikTokやInstagramを中心にオリジナル曲と洋邦さまざまな楽曲の弾き語りカバー動画を投稿し、総再生回数は500万超を記録。心の震えをそのまま放出したような歌声で多くの人々を引き付けているシンガーソングライター、Aki。今年1月、1stシングル「秘密の」をリリースしたことを皮切りに、「編み目」「みちわたる」と計3曲を発表している。ループするピアノが響き、ゆっくりとエモーションを高めるサウンドに乗せて、過去の後悔や心の奥にこびりつく秘密を消さずにそのまま抱えながら歌っていこうという想いを放つ「秘密の」から始まったAkiの物語。「編み目」で「まだ まだ ただ 続くの」と歌い、「みちわたる」で「舟は進む 脚は速く 明日が明ける 事も待てないみたいだな」と歌い、新たなフェイズに進むことを示唆している。Akiにとっての人生初インタビューを行なった。 ─高校は軽音学部に所属していたそうですが、最初に好きになったアーティストは誰ですか? Aki:小学校の頃、家のパソコンで音楽が聞けるようになって、そこでまず℃-uteの「大きな愛でもてなして」とBerryz工房の「ギャグ100回分愛してください」にハマりました。MVのコンセプトやハロー!プロジェクトではの見せ方にすごく惹かれて。今はハロプロからは離れてしまったんですが、その2曲だけはたまに聞きたくなります。私の中では日本を代表するアイドル曲ですね。その後、中学生の頃にRADWIMPSの「叫べ!」を聞いてバンド系も聞くようになって、RADWIMPSやONE OK ROCKが好きになって、歌が好きだったこともあり、高校で軽音楽部に入りました。 ─軽音ではボーカルをやっていたんですか? Aki:ボーカルをやる気満々で入ったんですけど、なぜかベースをやることになり、その後「ドラムが足りないからやってほしい」と言われて、だったらちゃんとやらなきゃと思ってドラムを習い始めました。高3で「私歌がやりたいんだった」って気付いて(笑)。でも誰もバンドを組んでくれなかったので、独学で弾き語りを練習してやり始めました。 ─オリジナル曲を作り始めたのも同じタイミングだったんですか? Aki:そうですね。ある程度弾き語りができるようになった頃、「歌がうまい」と言ってもらえることが増えて。自分が作った曲でも認められたいっていう承認欲求が出てきて、見よう見まねで歌詞を書いてメロディをつけ始めました。その時は誰に披露するわけでもなかったです。 ─2022年にSNSでカバー動画やオリジナル曲を上げ始めたきっかけは何だったんでしょう? Aki:歌うことはずっと好きだったんですが、現実的に社会人にならなきゃいけなくなって。でもそれがうまくできなくて、一回歌うことも曲を作ることもやめたタイミングがありました。人付き合いが元々苦手っていうこともあって、働いたり、誰かと遊んだり、普通のことがうまくできなくて、全部やめちゃおうと思ったんです。その頃TikTokを知って、「ここならどうせ誰も見ないし、何やっても恥ずかしくないや」と思ってカバー動画を上げ始めて、その流れで自分が作ったメロディの動画も上げ始めました。自分が思っていることを正直に歌にした曲を上げたら再生数がちょっと伸びたんですよね。それで、「もっと作ってみよう」という気になってオリジナル曲が増えていきました。 ─自分が作った曲に対して他の人から反応があるというのはどうでしたか? Aki:コメントを読んでると「共感してくれてるな」っていう感覚があって。私の曲は共感できない方が幸せな曲が多くて。 ─明るい感情の曲ではないですよね。 Aki:そうですね、明るい感情の曲も作ってみたんですが、綺麗ごとは言わずに自分の本心をさらけ出した曲の反応の方が多かったので、「そういう人は他にもいるんだ」と思いました。 ─その頃投稿していたのは、今リリースされている曲ですか? Aki:1stシングルの「秘密の」は最初ではないんですが、多分2曲目とかに上げた曲です。ボロボロの音質でサビだけ上げたんですが、反応してくれる人が多くて、コメント欄を見ると歌詞に感じ取ってくれるものが多い印象がありました。リリースさせてもらえることになって、アレンジを上口浩平さんにお願いしたんですが、「悔いがないよう思ったことをちゃんと伝えよう」と思いながらも、「上口さんが得意な部分は絶対に任せたほうがいい」と思って制作に臨みました。上口さんはすごく丁寧に話を聞いてくださる方で、擬音語とかをいっぱい使いながら自分の想いを伝えたんですが(笑)、しっかり汲み取ってくださって。アレンジされた「秘密の」を聞いたときに、「こんなにちゃんと曲になるんだ」と思って感動しました。