【第9回ふくしま産業賞 特別賞】紺野機業場(川俣) 「濡れよこ」技術継承
極細の絹糸を美しく織る伝統技術「濡(ぬ)れよこ」を国内で唯一、継承している。生地は服飾用をはじめ、日本画の画布「絵絹」など幅広い分野で活用されている。川俣シルクの伝統を守るため尽力している。 「濡れよこ」は、毛髪の3分の1ほどの細さの絹糸を使う。糸を湿らせてから縦横を交錯させることで生地表面が滑らかになり、独特の柔らかさや透明感が生まれる。世界的なファッションショーの衣装にも採用されている。2020(令和2)年には、繭をイメージした空間を川俣シルクでつくり、茶を振る舞うイベントを企画した。絹の新たな価値を創造し、日本文化の魅力を発信しようという試みだ。 新型コロナウイルス感染拡大に伴い絹の需要が落ち込んだ際は、製造する過程で発生する生地の端切れをオンラインで販売した。福島県川俣町内の企業と連携し、絹の残糸を再利用して乳幼児向けのニット製品を商品化させた。国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の実現を目指し、伝統を後世につなぐ経営を意識している。
地域おこし協力隊員を社員として迎え入れるなど、町の移住・定住促進にも力を入れている。紺野峰夫社長(40)は「川俣シルクを未来に残すため、今後も挑戦を続けていきたい」と強調した。 ▽設 立=1918(大正7)年 ▽社 長=紺野峰夫 ▽従業員数=10人 ▽住 所=福島県川俣町字日和田2 ▽電話番号=024(566)3024