W杯8強でもプーチン支持率急落 ロシア国民の反発招いた年金改革とは
6月中旬から約1か月にわたって行われたサッカーのワールドカップ(W杯)は、自国開催のロシアが大会前の予想を裏切る大躍進を見せ、多くのロシア国民が代表チームのプレーに一喜一憂した。大会中にはプーチン大統領が、各国の首脳とクレムリンで会談を行う「フットボール外交」を展開するなど、W杯はプーチン政権にとって国内外へのアピールという点で最高のツールであったはずだ。しかし、大会が終了してから約2週間が過ぎた現在、プーチン大統領は支持率の急落という想定外の事態に直面している。その原因となったのが、旧ソ連時代から続く国民年金の存在であった。 【写真】「ソ連」崩壊から大国「ロシア」の復活 忘れられつつあるソ連後の歴史
代表も好成績、W杯外交も順調に見えたが
フランス代表がクロアチア代表を破り、2回目の優勝を果たして終了したロシアW杯。大会期間中にプーチン大統領はスタジアムやクレムリンで、出場国の首脳や、北朝鮮の政府高官とも会談を行っているが、「ワールドカップ外交」で最も大きなものが、決勝戦直前にクレムリンで行われた露仏首脳会談だった。もともと予定されていたものではなく、フランス代表が決勝に進出したことで実現した、まさにサプライズ会談であった。フランスが準決勝でベルギーに勝利した直後に、プーチン大統領はフランスのマクロン大統領に電話をかけ、フランスの決勝進出に祝意を伝えたのだが、その際に決勝戦のキックオフ前にクレムリンで会談を行うというプランが決まった。 クレムリンで行われた露仏首脳会談では、シリア内戦やイラン核合意、北大西洋条約機構(NATO)をめぐるヨーロッパとアメリカの認識の違いなどが話されたのだという。フランス代表の決勝進出が決まったのが7月11日で、露仏首脳会談は4日後の15日に行われた。16日にはフィンランドのヘルシンキで米露首脳会談が行われたが、その前日にマクロンとプーチンが会談を行うというシナリオは、さすがにトランプ政権も予測していなかったはずだ。会談の詳細は明かされていないが、「ヨーロッパの特使」として、マクロンはプーチンに何を伝えたのだろうか。 7月15日のモスクワには、4年後にワールドカップを行うカタールのタミム首長の姿もあった。タミム首長も、決勝戦が行われる前にクレムリンでプーチン大統領と会談を行っている。カタールは昨年からサウジアラビアやUAEといった周辺の湾岸諸国との関係が悪化しており、ロシアから最新鋭の地対空ミサイルを購入することが決まると、サウジアラビアは「カタールへの軍事行動もあり得る」という厳しい姿勢をあらわにしていた。6月には仏メディアが、カタールとの関係改善に向けて、周辺の湾岸諸国がマクロン大統領に調停役として動いてほしいと要請していたことを報じている。まさに絶妙のタイミングで、同じ日にプーチン大統領が待つクレムリンを、フランスとカタールの首脳が訪れたのだ。