「馬鹿げている」ほど強い。対戦相手が証言するアーセナル戦の難しさとは
文 田島 大 今季プレミアリーグとUEFAチャンピオンズリーグで栄冠を目指して邁進するアーセナル。彼らは「強い」が、一体何が強いのだろうか? 昨季、アーセナルは248日間もプレミアリーグで首位に立ちながら、最終的に失速してマンチェスター・シティのリーグ3連覇を許してしまった。しかし、彼らはあれから積極的な補強を行って一回りも二回りも成長し、今季は無敗優勝した2003-04シーズン以来のリーグ制覇に近づいている。ここまで31試合を戦って、最多得点と最少失点を誇るチームの強さの秘密はどこにあるのだろうか? 今季対戦した相手チームのスタッフがスポーツ専門サイト『The Athletic』でアーセナルの「強さ」について言及しているので紹介しよう。
「まるで守備vs攻撃の練習のよう」
匿名を条件に、プレミアリーグの現役コーチやスタッフが本音を漏らしている。あるコーチは「打開策が思いつかなかった」と明かす。通常の試合では、どんな苦しい状況でも試合中にスタッフがいくつか打開策を思いつくそうだが、アーセナル戦では「ピッチ脇にいて、なかなか打開策が思いつかなかった」という。一方的に攻められる展開となり、「まるで守備vs攻撃の練習ようだった。アーセナルは流れるような攻撃を続け、DFベン・ホワイトが何度も攻めてきて前半だけで100回ほどオーバーラップの対応をさせられた」と振り返る。 彼のチームはマンツーマンで対応することにしたという。「マンツーマンに変えてカオス状態を生み出すことができて、少しはマシになった。試合が組織立った状況では、常にアーセナルに支配されている印象だったからね。今季、最も厳しい試合だった。」 攻撃もさることながら、アーセナルの守備組織に感心させられたそうで、特にMFマルティン・ウーデゴールの献身性を称える。「ボールを失った後のリアクションが非常に素早い。彼らには贅沢な選手がいない。攻撃陣のウーデゴールでさえ、恐ろしいほど守備意識が高い。彼は左サイドのセンターバックにプレスをかけ続ける。突破されたらすぐに中盤に戻る。それを繰り返すんだ。プレスが失敗しても、がっかりせず、すぐに切り替えられるんだ」 今季CLのグループステージ第1節でアーセナルに0-4の大敗を喫したPSVのピーター・ボス監督も守備力に驚かされたそうだ。パフォーマンス的には手応えがあったそうだが、アーセナルのボックス付近まで攻め上がると、そこで壁にぶつかったという。「自分たちと何が違うのか、私はコーチとともにアーセナルを研究した」とボス監督は明かしていた。辿り着いた答えは帰陣の速さだという。PSVはボールロスト後に6、7人がボールより後ろに戻るが、アーセナルは10~11名が即座に戻っていたそうだ。それを選手たちに説明して自分たちでも取り入れるようになったPSVは、エールディビジで首位を独走している。