生活道路に「ゾーン30プラス」じわり増加…段差などで速度抑制、振動懸念で整備が進まない県も
ハードルとなっているのが住民の合意だ。和歌山県は整備ゼロで、和歌山市の担当者は「ハンプを試験的に設置したが、住民から『車が通りにくくなる』という声もあり、本設置には至っていない」と話す。
愛知県豊田市の国立豊田高専の山岡俊一教授(交通計画)が19年、生活道路に物理的対策を行うことの賛否を県民ら約1400人にアンケート調査したところ、狭さくは「景観への影響」などを理由に45%が反対。ハンプについても車の通行時の振動を懸念する人が多く、反対が28%に上った。
山岡教授は「振動を抑える技術も発達していることを知ってもらい、安全対策の選択肢を増やすことが重要だ」と指摘する。
こうした課題を踏まえ、国交省は今年度、合意形成に成功した事例などを紹介する手引を作成し、自治体に配布する計画だ。
設置基準についても、軽自動車の車幅に比べて、狭さくの目安(幅3メートル)が広いため「効果が限定的」との指摘もあることから、見直しを進めている。
同省の担当者は「豪雪地帯では除雪の妨げにならないようポールを着脱式にするなど、工夫を凝らした事例もある。こうした先進事例を広く共有し、整備を促したい」としている。
法定速度の引き下げ、2026年9月に施行へ
幅員の狭い「生活道路」の自動車の法定速度について、政府は7月、一律に時速60キロから30キロに引き下げる改正道路交通法施行令を閣議決定した。2026年9月に施行される見通しだ。
ゾーン30については、警察庁は法定速度の一律引き下げ後も、「ドライバーへの周知効果がある」として制度を継続する方針だ。国交省はゾーン30プラスについても引き続き、30キロ制限の道路を対象に拡大を目指す。