スイミングの先生は86歳 広島の女性、40代で指導者に 教え子は300人
泳ぎ始めてもう80年以上がたった。「ずっと泳いでいるからずいぶん風邪をひいてないのよ。水着は仕事着だからしゃきっとなる」。広島市安佐南区長束4丁目の長束スイミングスクールで週2回、指導する池田律子さん(86)=安佐南区=は言う。スクールは4月で40周年を迎える。開設間もない頃から指導し、孫より若い20代が多い指導者の中で最年長だ。 【地図】広島の長束スイミングスクール 今教えているのは平均年齢80歳のほぼ同世代の女性たち。健康のための水中での体操を教えたり、泳ぐ人に「もう少し腕のかきを浅く」などと助言したりする。時にはスムーズな泳ぎも披露する。「最近は測っとらんけど、10年くらい前は25メートルを17秒。今は多少落ちたと思うけどね」 海に囲まれた広島県大崎上島町出身だ。幼い頃から潮が満ちれば海へ泳ぎに行った。子育ての合間の趣味として水泳教室に通い始めたのは30代。「我流で泳いでいたからバタフライの腰のうねりが難しくて…」。当初は戸惑いもあったが、すぐに上級クラスに。10年後、指導者の誘いを受けた。 40代と遅咲きで指導者になった。水が怖くて逃げ回る子どもは抱きしめて慣れさせた。「泣きよったけど帰る頃にはなんともなくなった子もおったね」。これまで約300人に教えてきた。 指導者として伝えたいのは年を重ねてもマイペースで泳げる楽しさだ。「何も考えずに泳ぐと、ゆったりと時が流れて気分が落ち着くのよね」。背筋がピンと伸びた水着姿の笑顔が、水に映る。
中国新聞社