物流の謎! 「ダンボールサイズ」を統一すれば時間が節約できるのに、なぜ実現しないのか?
長時間労働の原因
物流業界は労働時間の短縮が大きな課題となっている。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が年間960時間以内という規制が適用されたが、それらの法令を守っていればよいということではなく、できる限り長時間労働を減らすことで働きやすく、より魅力ある職種にしていく必要がある。 【画像】えっ…! これがトラック運転手の「年収」です(計15枚) トラックドライバーの長時間労働の要因のひとつは、 「荷物の積み下ろし」 に多くの時間が割かれていることだ。さまざまな大きさや重さの荷物をつぶれや荷崩れのないように積みつけたり、荷降ろしの際にドライバーの手によって1個ずつ所定の場所まで運んだりしなければならないことで、多大な時間が必要となっている。 パレットやカゴ車に積みつけられている場合は、それらの積み込みや荷降ろしは数分から数十分で終わるが、すべてバラ積みの場合は大型車で積み込みに2時間程度、荷降ろしにも同じくらいの時間を要することがある。トラックを止めてそれらの仕事を行うだけでも合わせて 「約4時間」 にも及ぶ作業が発生しているのである。 加えて、荷積み・荷降ろし場所にはトラック用のバースが空いていないため、しばしば待機を余儀なくされる。先に到着したトラックが積み下ろしのために長時間バースを占有している場合、ひたすら空くまで待つしかない。 近年、ドライバーの拘束時間を減らすため、パレットやカゴを使った積み下ろしが増えているが、バラ積みがゼロになったわけではない。
異なる大きさのダンボール
トラックへの積み下ろしだけでなく、パレットやカゴ車に荷物を積みつける際にも荷物のダンボールサイズがバラバラだと時間と労力がかかる。 サイズがまちまちなために、下の方には大きなサイズの箱を、その上には小さなサイズの箱を乗せるようにしたり、隙間をできるだけ減らすような組み合わせを考慮したりしながら作業を行うことになる。ダンボールの大きさが 「ある程度統一」 されれば、時間の節約になるが、現状ではその動きはあまりない。 ダンボールの外装サイズがどのように決まるかというと、当然ながらなかに入れる商品のサイズによる。商品を入れた際、できる限り隙間がなく、ダンボールのなかがスカスカにならないように大きさを設計する。 宅配便などではダンボールのサイズによって運賃が決められている。60サイズでは1000円、120サイズでは1900円といったように、サイズ別に料金が決まる。ただし、120サイズといっても長さ、幅、高さの合計が120cm以内ということであり、実際の長さや幅、高さは荷物によってまちまちである。 近年は環境問題に対応するため、ダンボールや緩衝材の使用量をできるだけ少なくし、箱の内側をスカスカにしないことが追求されている。大手のネット通販業者や物流事業者では、商品のサイズを計測して、そのサイズにぴったりと梱包できるようにダンボールサイズを自動的にカットする機械を導入しているところもある。その場合、ダンボールは一梱包ずつ異なる大きさになる。 しかし、物流を効率化する上で、箱のサイズはできる限り統一することが望ましい。農林水産省ではたまねぎやジャガイモなどの青果物の種類ごとにサイズを統一するための実証実験を進めている。国土交通省では、加工食品をパレットの標準サイズであるT11型(長さ1100mm×幅1100mm)に無駄なく積載ができるように、長さ265mm×幅210mm×高さ210mmを基本の外装サイズとして推奨している。