ディズニー「グッズ450万円買い占め」中国人集団に密着、「転売」は「闇バイト」のゲートウェイに? 危険性も指摘
●グッズ販売会場で生配信しながら「これ買って」
「中国では転売は悪いことと認識されていません。ほしい商品が品薄になって不満を抱えている人はいると思いますが、社会全体で目の敵にはされていません。一つのビジネスです。 日本はかつて、資本主義ながらも一億総中流と言われ、定価で物を買えるのが当たり前でした。ところが、貧富の差が広がり、ほしいものをかっさらわれ、さらに利鞘をのせて転売ヤーが儲けているのは許せない。。そんな気持ちを抱くのも無理はありません」(奥窪さん) とはいえ、転売とは「時流を見極め、これといった商材に狙いを絞り、大量に買い占め、販路を確保しながら、在庫を抱えないように売って利益を得る行為」とも説明できる。 これはそのまま商売の基本でもあり、ビジネスセンスや努力が必要になることも間違いない。 中国人女性の間で支持されるSNS「小紅書(シャオホンスウ)」では、ライブコマースでフォロワーに商品を販売できるのが特徴だ。 先の羽生結弦グッズ転売で儲けた中国人女性も、会場で売られている限定商品について生配信を行い、自分のフォロワーから注文を受けていた。 フォロワーを増やし、繋ぎ止めるための労力が欠かせない。 「自己実現の魅力もあり、ビジネスの快感も得る人もいるはず。日本の転売ヤーはこれからも増えていくでしょう」
●売り方にも工夫を…転売が「闇バイト」のゲートウェイに
奥窪さんは、転売対策を考えるにあたっては、転売ヤーだけを叩くのではなくて、元の売り手側にも問題意識を持ってほしいと話す。 「転売対策のために、店側が客に『転売をしない』と誓約書にサインさせることによって、刑事なら詐欺罪での摘発、民事なら契約違反だとして、転売対策もできます。ただ、抜本的な対策になるかというと疑問です。 限定商品を販売することは、転売ヤーに来てくださいと誘うようなものです。ファンに嫌な思いをさせるだけ、そのような視点も持ってもらえたらと思います」 転売の思わぬリスクにも言及する。 貧富の差は広がり、若者や幼い子どもの母親が「闇バイト」に走る世情だ。 「転売のために並びに動員をかけられた人が、スマホの契約に駆り出されることがあります。これも闇バイトの一つでしょう。彼らが強盗に加担したという話はまだ聞いたことはありませんが、転売が闇バイトのゲートウェイになっているとは指摘できます」 【プロフィール】 奥窪 優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県松山市生まれ。フリーライター。上智大学経済学部卒業後に渡米。ニューヨーク市立大学を中退、現地邦字紙記者に。中国在住を経て帰国し、日本の裏社会事情や転売ヤー組織を取材。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』『ルポ 新型コロナ詐欺』など。