フィードバックから始まる「意味づけ」の旅
エグゼクティブコーチをしていてとても印象に残っているクライアントに、Aさんがいます。 Aさんは、ニッチな部材を扱っている会社をグローバルに大きく成長させてきた経営者です。さらなる成長を目指し、コーチ・エィとともに組織変革に取り組むことを決められました。 Aさんとのエグゼクティブ・コーチングをスタートするにあたり、Aさんのリーダーシップについて部下からフィードバックをもらいました。私の目から見てもなかなか辛辣な結果が出ましたが、セッション前に彼にレポートを渡し、事前に目を通してほしいとリクエストしました。そしてセッション当日、彼がフィードバックに対してどんな反応をしているかが気になり、私は少し緊張しながら彼を待ちました。 彼の姿を目にしたとき、一目で彼の憤りを感じました。出張続きで体力的にも辛いタイミングで受け取った厳しいフィードバック。顔色も優れません。 「体調も悪く、今日はキャンセルしようかどうか迷いましたが、来ました」 と言って、彼は話し始めました。 その日のセッションでは、彼が何に憤りを感じているのかについて、彼が話し切るまで静かに聞きました。彼のキャリアの大半は営業で、お客様の話に常に真摯に耳を傾けてきたこと、部下を持つようになってからも、社長になってからも、相手の話を聞くことを大事にし、部下や社員と対話の時間をたくさんとってきたこと。なのに、部下からは「人の話を聞いていない」「自己主張が強い」というフィードバックをもらって、とてもショックだったこと。 60分間、ただただ静かに聞きました。そして 「そうだったんですね。体調が悪い中、来てくれてありがとうございました。お体に気をつけてくださいね」 と、その日のセッションを終えました。 後日、彼からこんなメールが届きました。 「日々いろいろありますが、鉄の靴を脱ぎ、軽やかな気持ちでコーチングセッションに行っています」