アライアンス再編、日本寄港減少に注意。拓大・松田教授、関西物流展で講演
拓殖大学の松田琢磨教授は11日、インテックス大阪(大阪市)で開かれた第5回「関西物流展」でサプライチェーンと国際物流の動向をテーマに講演し、マースクとハパックロイドの新たな提携「ジェミニ」によって来年からは北東アジア・日本の寄港地が減少するなど船社アライアンスの再編の影響について注意を呼び掛けた。また、今後のコンテナ輸送での注目点として北米東岸労使交渉の影響や越境EC(電子商取引)関連貨物の需要増などを挙げた。 松田氏によると、ジェミニが定時運航率90%以上を目指しハブ&スポーク型のネットワークを徹底してフィーダーを活用することで、日本では寄港が減少することになる。国際コンテナ戦略港湾が苦戦を強いられる可能性もあるという。 現状、2Mのサービスを利用する荷主はジェミニによる上海―日本フィーダーを利用するか、他のアライアンスの利用かを考える必要がある。オーシャン・アライアンス(OA)は2032年までの提携延長を発表しているが、釜山港のウエートが重いザ・アライアンス(TA)のサービスがハパックロイド離脱後にどう変わるかを含め、松田氏は「荷主は船社やアライアンスの再編に関して情報を得ながら、最適なサプライチェーンを確保していかねばならない」と述べた。 今年予定される北米東岸港湾の労使交渉については、考慮すべき要素として北米向けの荷動きの増加が続く可能性と直近のロサンゼルス・ロングビーチ港の取扱量増加、カナダ鉄道のストライキに関する報道などを挙げた。パナマ運河の通航制限問題を併せて注意しておくべきだという。 越境EC関連貨物は、海上コンテナ輸送、航空輸送ともに需要をけん引している。昨年後半は航空輸送の需要が下げ止まり、改善に向かったところに出荷増が重なった。これに伴い、中国発貨物の成田空港での積み替えが増え、市況の押し上げ要因にもなった。 EC貨物はボリュームがあるため、海上・航空輸送ともに影響が大きい可能性がある。船社や港湾側は、EC貨物など高付加価値貨物の増加に対応するため、IT投資とデジタル化、自動化を進める必要があるという。 松田氏はこのほか、パナマ運河の通航制限、紅海情勢によるスエズ運河の航行回避問題などに言及した。スエズ運河の迂回(うかい)により欧州航路の航海時間は往復で2週間程度延び、定時到着率も悪化、迂回による遅れを補うためにコンテナ船の運航速度が上昇し、GHG(温室効果ガス)排出量も増加していると考えられる。 運賃市況も上昇したが、新型コロナウイルス禍時と違ってモノの需要拡大や労働力不足は見られず、需給逼迫(ひっぱく)を起こすレベルではないという。パナマ運河の問題を含め「今後も大きな影響はない」とした。
日本海事新聞社