“太平洋の島国”との関係性強化、同地域の発展貢献…今年で10回目を迎える「太平洋・島サミット」を解説
◆島国ならではの課題とは?
太平洋島嶼国には、日本と同じ島国特有の課題に直面しています。その課題は大きく3つに分けられます。 <1:国土が狭く分散している> 人口が少ないと国内市場も小規模となり、成熟した産業が育ちにくい傾向にあります。例えば、ナウル共和国やツバルは東京の品川区とほぼ同じ面積の島ですが、人口は約1万1,000人~1万3,000人。また、ナウルの主要産業は“りん鉱石の採掘”といった鉱業になりますが、現在はすでに枯渇状態で、ほかに経済を支えるめぼしい産業がなく、自給可能な食糧産業もないため、食糧や生活物資のほとんどを海外からの輸入に頼っています。 <2:国際市場から遠い> 主要な国際市場が地理的に遠いため、そのぶん輸送コストが高額になります。ナウルのように輸入に頼っている国は、世界的な石油価格上昇の影響を受け、物価も上昇している現状があります。また、国土である島々が離れているため、同じ国内でも(物資が届くまでに)多くの時間を要するところもあります。 <3:自然災害や気候変動などに弱い> 太平洋島嶼国は、地震やサイクロンなどの自然災害が多発するエリアで、5月にはパプアニューギニアで大きな地すべりが発生。その際に日本は、テントや毛布などの緊急援助物資を送り、国際機関を通じた緊急援助をおこなっています。また、地球温暖化に伴う海面上昇により、ツバルなどは国土が水没の危機に瀕しています。
◆人物交流を重ねて信頼関係を構築
このような問題に対して、日本は資金や知識、技術を提供して課題解決に協力しています。岩崎さんは「政府開発援助(ODA)などを通じて、空港、港、病院、橋などの社会経済活動に必要な大型インフラを整備しています。また、未来を担う若者らの技術力や知識を向上させるために専門家を派遣し、いろいろな分野の研修などもおこなっています」と力を込めます。 また、日本の強みを活かした貢献活動もおこなっています。例えば、サモアに本部を構える国際機関「太平洋地域環境計画事務局」は、気候変動業務の強化と環境や気候変動に強い国づくりのための人材育成を目的とした施設でしたが、十分な収容能力と研修に適した設備を有していない状況にありました。 そこで日本は第7回の「太平洋・島サミット」で、支援を表明した重点分野として“防災”“環境”“気候変動”を挙げ、かつ「太平洋気候変動センター」という研修施設を整備。そして、新しく立ち上げた施設でeラーニングプラットフォームを活用した研修がおこなわれ、13の国と地域から54名が参加。災害に強い建造物の構造などについて学ぶことができました。 さらには人物交流も積極的で、開発途上国の国づくりに貢献できる人材を現地へ派遣する「JICA海外協力隊」では、これまで約4,000人を派遣しています。例えば、太平洋の国々は廃棄物処理に大きな課題を抱えていることから、パラオでは協力隊員をリサイクルセンターに派遣。廃棄物管理の指導や、生ゴミなどから肥料を作るコンポスト施設の開発をおこないました。 ほかにも、外務省が進める対日理解促進交流プログラム「JENESYS」では、太平洋の島国の青年を日本に招へいしたり、今年3月には島国やニュージーランド計10ヵ国の学生が日本を訪問し、平和学習として広島を訪れたり、日本文化を学ぶために福島でホームステイをして地域の住民と親睦を深めました。 日本と太平洋の国々は歴史的にもつながりがあるだけでなく、各国の課題に日本がともに取り組み人物交流を深めることで、重要な“信頼関係と絆”を深めています。 第10回「太平洋・島サミット」は2024年7月16日(火)から18日(木)まで東京で開催されます。今回は気候変動や防災、海洋、環境、人的交流、経済開発、平和、安全など、太平洋の島国と日本が共有するさまざまな問題に、ともに取り組んでいくための協力を重点的に議論する予定です。 最後に岩崎さんは「太平洋に浮かぶ国々と地域は、日本と同じ海に生きる大切なパートナーです。今回の『太平洋・島サミット』にご注目いただくと同時に、それぞれの国と地域について理解を深めていただければと思います」と呼びかけました。 番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「太平洋・島サミット」について復習します。村上は、認知を広げる意味を込めて“太平洋・島サミットに注目”と記します。一方、杉浦は“太平洋の島国と日本の絆”に注目し、「やっぱり、太平洋の島国と日本は密接な関係にありますね」とコメントしていました。