【小栗基裕×海路】なんだか奇妙な舞台。でも現代社会に通じる“不条理劇”で伝えたいこと【s**t kingz】
ダンサー史上初の日本武道館ライブは通過点に過ぎず、今年も多方面で活躍しているs**t kingzの4人。ソロパフォーマンスで即興ダンスに力を入れてきたOguri=小栗基裕は、磨き上げた表現力と瞬発力をソロ活動でも発揮している。4月26日に開幕する主演舞台『空夢』は、10代の頃から才能を高く評価されてきた脚本・演出家の海路(みろ)が手掛ける作品だ。 【写真で見る】小栗基裕×海路、舞台にかけるふたりの想い 年齢は一回り違えど、物腰が柔らかいことが2人の共通点。創作活動の話になると、言葉の節々に隠しきれない情熱が漏れてしまう部分も似ている。お互いの作品に感銘を受けてつながった小栗と海路が、一緒に作り上げる舞台作品で表現したいこととは? 稽古が始まる前に実現した対談を2回にわけてお届けする。
たまたま調べていて出会った言葉をタイトルに
――舞台『空夢』はどんなきっかけで生まれた物語ですか? 海路 個人的に夢という概念に興味があって、いろいろ調べている時期に、たまたま“空夢”という言葉に出会ったんです。辞書で引くと『見もしないのに、見たようにこしらえて語る夢』と書いてあって、そこに奥深さを感じて。直感で空夢をタイトルにしようと決めて、そこからストーリーの概要も突発的に頭に浮かんだんです。よく怪談で途中から登場人物が1人多いことに気づく話がありますが、あれが現実に起きたらどうなるのか……と気になって、同級生が1人多いという設定で物語を作り始めました。 ――これまでの作品も、ふと浮かんだキーワードをベースにアイデアを積み上げていくことが多かったですか? 海路 そうですね。パッと浮かんだ1行の設定に、その時々で自分が感じている何かを絡めていくことが多いですね。 ――ベースの設定が決まってから、どれぐらいの期間で台本を書き上げますか? 海路 いつもは台本に取りかかってから2ヵ月ぐらいで仕上がるのですが、今回は3ヵ月かかりました。これまで以上にやりたいことが多くて、いろんな要素を入れ込みながら物語を作っていたら、想像以上に時間がかかりました。 ――小栗さんは、俳優の視点で海路さんの台本にはどんな特徴があると思いますか? 小栗 これまで僕は海路さんが手掛けた作品を『空夢』を含めて3作品に触れてきたのですが、どの作品も、現実では絶対に起こらないような残酷さがあるんです。今回は、同級生が1人多いから、1人減らそうという方向に話が進んでいく。前回の舞台でも断食の刑が描かれていて、さらっと残酷な表現が入ってくるんですよ。それが最初は異世界の話に思えるんだけど、だんだん、似たような現象がリアルの世界でも起きているような気がしてきて。もしかしたら、無意識のうちに自分も同種類の残酷なことをしているかもしれない……と、最終的には他人の話とは思えないような後味を残してくれるんですよね。 海路 嬉しい感想です。舞台作品として不条理な物事を描くと、それが世の中で実際に起きている事象とつながってしまうことが多いんですよね。僕たちは普段生きているなかで、まだ気づいていないけど本当は理にかなっていないことがたくさんあると思うんです。だから、一見するとあり得ないような不条理を描いたとしても、不思議とその時代の文脈にハマることがあるんです。 小栗 なるほど。最初から現代社会の不条理を描こうとするのではなく、個人的な空想から創作をスタートさせるんですね。面白いな。