『ブラジルが世界を動かす』=7年半の現地取材の集大成=今を知るとっておきの一冊
日本経済新聞社のサンパウロ支局長を2度、通算7年半務めた宮本英威さんが10月、『ブラジルが世界を動かす』(平凡社新書)を出版した。日本でブラジルに関連する本を探すと、2014年のワールドカップと2016年のリオオリンピックの頃に出版された本がほとんどで、最近のブラジル情勢が体系的にわかる本が少ない。この本は、「ブラジルの今」を知るのにとっておきの本と言えそうだ。
序章から終章まで全8章で成り立ち、各章末には、宮本さんがブラジル赴任中にインタビューしたキーパーソンが取り上げられている。著者の宮本さんに聞くと、「柔道のラファエラ・シルバ選手は、ファベーラ(貧民窟)出身で、黒人で同性愛者でもあり、様々な差別を乗り越えてリオ五輪で金メダルを獲得した。その後一度勝てなくなったが、パリ五輪で返り咲いている。こういう、ブラジル好きな人にもあまり知られていない、すごいブラジル人を知ってほしいと思った」という。 他にはルーラ大統領など著名人も並ぶが、「メディアという立場だから会えた人だし、その人のことを伝える役割があると思っている。この本は、7年半のブラジル滞在の集大成。ブラジルの皆さんに取材に応じていただいたから書けた本。自分にとって、ブラジルは日本に次いで2番目に大切な国だし、本を出してよりその気持ちが強まった」との熱い思いを持っている。 今年4月に日本に帰国後は、仕事上はブラジルと直接関係のない「政策報道ユニット経済・社会保障グループ次長」となった。だが、音楽家のジルベルト・ジルが日本公演した際には、手を尽くして独占インタビューを行った。また、ブラジルに関連する講演会など、日本とブラジルに関する仕事を可能な限り続けたい、という。 この本には、現在若手サッカー選手で注目株の一人、エンドリッキ選手が16歳の時の貴重なインタビューも掲載されている。宮本さんも「偉大な選手になってほしいと日本から熱い目で応援している」という。 若手サッカー選手だけでなく、ブラジルにはまだまだ世界を驚かせる才能が眠っている。そんなブラジルの今を、知りたい方はぜひこの本を手に取ってみてはいかがだろうか。ブラジルでも、AmazonのKindle版(https://www.amazon.co.jp/dp/B0DK2RJ3NK/)などの電子書籍で読むことができる。