夏の甲子園で見つけた逸材! 宮崎商の遊撃手・中村奈一輝の遠投に浅尾拓也の姿がダブって見えた
【試合中にまさかのアクシデント】 試合が始まり、中村がどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみにしていたが、アクシデントが起きてしまった。 「1番・遊撃手」で出場したが、試合中盤に足がつってしまったせいで50m6秒0の俊足を生かせず、フィールディング、ベースランニングともに今ひとつ精彩がなかったように見えた。 定位置付近のゴロをさばく際、トップを2度つくって投げるあたりも、足の動きに不安があって、いつもよりも慎重な動きになってしまっていたのだろう。二塁ベース上での併殺プレーでも思うようにフットワークが使えない。それでも矢のような痛烈な送球で、高い能力の片鱗を見せてくれた。 「足を使ってチームに貢献するのが自分の仕事だと思っているので、それが十分にできなかったのが......」 試合後の取材で、中村を囲んでいたメディアの輪が分厚くて、そこまでしか聞こえなかったので、チームメイトに「投手・中村」の可能性を聞いてみた。 「うーん、そうですね......ピッチャーとしてもコンスタントに140キロ台を投げられて、スライダー、カットボール、チェンジアップと鋭い変化球も投げられて、試合中に急にサイドからも投げたりするじゃないですか。そういうところは天才だと思いますし、短いイニングのリリーフで出てきたら、ちょっと手の出ないピッチャーだろうなって思います」 宮崎大会では、ストッパーとしての役割を担って全試合に登板。12イニングほどを投げて1失点に抑えてきた。 中京大中京との試合、7回表に3対2と勝ち越した宮崎商。 「いつもだったら、あそこで中村がリリーフに上がって、7回からピシャッと抑えて......というのがウチの必勝パターンだったのですが。それが叶えられなかったのが私たちも悔しいですし、中村本人はもっと悔しいと思います」 絞り出すように語った東大地部長の言葉に、心の底からの悔しさが滲む。 今年の高校球界は、全国に「これでもか」というほど、高い能力を備えた遊撃手が揃っている。もちろん、中村もそのなかのひとりに数えられる存在ではあるが、彼のスローイング能力に、投手としての将来性を感じずにはいられない。
中村の将来の投手像にピッタリ重なるのが、中日黄金期のリリーバーとして活躍した浅尾拓也だ。アベレージ150キロ前後の快速球に、タテのスライダーと高速フォークを武器に、細い体で6年間、毎試合のように終盤のマウンドを支配した"快腕"だ。 すでに中村は、最速146キロをマークしているという。チームメイトが太鼓判を押す変化球の使い手でもあって、遊撃手としても一級品なのであれば、俊敏なフィールディングで相手のチャンスを封じてきた浅尾の再来ではないか。そんな姿が浮かんできて仕方がない。 「高校野球2024年夏の甲子園」特設ページはこちら>>
安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko