今の望みは「家族と普通の話をすること」、ウクライナ人デザイナーが“自動販売機”に描いた平和への願い
ウクライナから避難してきた、ウクライナ人デザイナーのエリザベータ・コロトコヴァさん。離れて暮らす家族と再会したとき、彼女が一番したいこと。それは、争いが始まる前まで当たり前だった、“普通の日常”を家族全員で過ごすことだった。
白鳩のイラストに託した世界平和の願い
今年9月、岐阜県岐阜市の柳ヶ瀬商店街に一台の自動販売機が設置された。販売しているのは、地元名物のどて煮やケイちゃん焼き、ウクライナの伝統料理「ボルシチ」。販売機には、青空へ向かって咲く大きなひまわりとオリーブをくわえた白鳩のイラストが描かれていた。イラストデザインを手がけたのは、ウクライナ人デザイナーのエリザベータ・コロトコヴァさん。去年3月にウクライナ・イルピンから名古屋に避難、現在はグラフィックデザイナーとして活動している。
自身がデザインした自動販売機を前に、「信じられないほど嬉しい!」と満面の笑みを浮かべるエリザベータさん。彼女曰く「自動販売機の文化がない」というウクライナ。エリザベータさんが手がけた自動販売機は、イラストを通して2つの国の文化が重なった交流の証にもなった。
イラストに込めた想いについて、「鳩は世界平和のイメージがあるので、“ウクライナに平和を”という想いで描きました」と流暢な日本語で語るエリザベータさん。そんな様子を笑顔で見守り、彼女が紡ぐ言葉にうなずく男性がいた。エリザベータさんにデザインの依頼をした、岐阜市の弁当製造会社「ニシキフード」の岩田国大社長だ。
“ウクライナの支援になれば”とデザインを依頼、販売商品に「ボルシチ」を提案したのも岩田さんだった。販売の経緯について、「ボルシチはウクライナで言うと、日本のみそ汁に近いと聞いた。(ウクライナの)戦争が起こる前の日常を、他の方にも興味を持ってほしいと思った」と語る。ボルシチは販売前に、もちろんエリザベータさんが試食。「塩を少々加えると、もっとおいしくなる」などエリザベータさん自らが意見を出しながら、岩田さんと試行錯誤を繰り返して仕上げたこだわりの味にも注目だ。