旧盆入り、心穏やかな墓参遠く 奥能登の墓地
●避難区域で足運べず ブルーシートに合掌 元日の地震で大きな被害を受けた奥能登で13日、旧盆入りに合わせて墓参りが本格化した。倒壊した墓の修復が間に合わず、ブルーシートに覆われたままの墓石に手を合わせる住民の姿が見られたほか、2次災害の危険がある避難指示区域では墓参そのものを断念する人も。被災者が心穏やかに先祖と向き合える日は遠い。 【写真】輪島市稲舟町の共同墓地。2次災害の危険があり、旧盆入りした13日も閑散としていた 輪島市北部、日本海に面する国道249号沿いにある稲舟町の共同墓地は、ひっそりとしていた。内陸部の急傾斜地に立地する同町には地震後の1月7日、「大規模な地滑りの可能性がある」として75世帯に避難指示が出され、今も解除されていない。 約20区画の共同墓地は地震で大半が倒壊。急な斜面に位置し、高齢者が足を運びづらい場所であることに加え、地震で土砂崩れが起こる恐れもある。13日、用事のため稲舟町に戻った背口秀治さん(47)は「短時間で墓参りを済まそうと思っても、難しいお年寄りもいる」と話した。 背口さんは自宅が大規模半壊と判定され、先祖の墓も崩れた。「家と墓の両方を再建するのは経済的に厳しい」。墓を修繕する予定はないという。 ●「生活で精いっぱい」 輪島市河井町の弥生墓地では、家族連れらがブルーシートがかけられた墓石の前で静かに手を合わせた。 同市二勢(ふたせ)町の藤田宏昭さん(63)は自宅が全壊して仮設住宅に入居しているといい、「お盆までにお墓を直したかったけど、自分たちの生活で精いっぱいだった。お墓はまだ直せていないが、お参りできて良かった」と話した。 市によると、市内の公営墓地では、ほぼ全ての墓石が被害を受けたと見込まれる。このため、奥能登の石材業者に修繕の依頼が殺到し、人手不足で復旧が進んでいない。