ベネズエラのマドゥロ政権、制裁逃れで暗号資産使用も-専門家ら警告
(ブルームバーグ): ベネズエラのマドゥロ政権が国際的な規制回避で暗号資産(仮想通貨)をどのように利用しているかを巡り、同国の活動家や政策アナリストは制裁と調査の強化を求めている
マドゥロ大統領が7月に予定される選挙で公正な投票を認める合意を順守しなかったことを受け、米国は5月31日に金と石油を対象とした対ベネズエラ制裁を再開した。米国は20年近くにわたり、ベネズエラの個人と事業体に制裁を科してきた。
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ブロックチェーン分析会社チェイナリシスの国家安全保障情報責任者で、ワシントンの政策研究団体ウッドロー・ウィルソン国際学術センターが4月にまとめた報告書の寄稿者アンドルー・フィアマン氏は、「制裁を受ける政権について言えば、制裁をかいくぐるさまざま手段が模索されることが多い」とし、「ベネズエラ政府とマドゥロ政権は長年にわたり幅広い手法を通じてそれを実行してきた」と指摘した。
同報告書の共著者であるベネズエラ反体制派レオポルド・ロペス氏とチェイナリシスのインテル・ソリューションズ担当ディレクター、クリストファー・ドーセット氏によると、制裁違反は暗号通貨プロジェクトの目的だったとマドゥロ政権が表明するなど、直近の一連の制裁には大きな穴がある。
ベネズエラ政府は暗号通貨について未経験ではない。2018年には「ペトロ」と呼ばれる独自のトークンを発行。ベネズエラ産石油・鉱物資源を裏付けとするペトロは、ハイパーインフレの際にはベネズエラの通貨ボリバルの代替になるとともに、米制裁回避の手段になるとの触れ込みだった。政府は金融機関に対しボリバル、ペトロ両方での残高表示を義務付けたが、ペトロはほぼ象徴的な価値にとどまり、一般市民にとって利便性はほとんどなかった。
国営ベネズエラ石油(PDVSA)に対して支払われるべきだった資金の流用に暗号資産ウォレットが使われたとされる大規模汚職に関する調査開始を受け、政府は今年1月にペトロの使用を停止した。