トランプ氏、減税を前面に インフレ、財政悪化の恐れ 米大統領選
【ワシントン時事】返り咲きを確実にしたトランプ前米大統領は、経済政策で減税を前面に掲げる。 1期目在任時に実現した「トランプ減税」の恒久化に加え、残業手当などの非課税化を打ち出し、負担軽減を通じた経済成長の加速を狙う。一方、同氏の主張する関税引き上げや不法移民の強制送還は、財政赤字膨張と相まって、インフレを再燃させるとの懸念がつきまとう。 「労働者層のために大幅な減税を行う」。こう語るトランプ氏は今回の選挙戦で、残業手当やチップ、社会保障関連の給付金に対する非課税化を経済政策の目玉に据えた。 1期目の2017年に成立した、当時の看板政策である大型減税は25年末に期限を迎える。これをトランプ氏は恒久化させる方針だ。 トランプ氏は関税引き上げで、減税の財源を賄うとしている。ただ、財政悪化は避けられないとみられ、米シンクタンク「責任ある連邦予算委員会」は35年度までの10年間で7兆7500億ドル(約1200兆円)の債務増加を見込む。 トランプ氏が訴える移民規制強化は労働力不足を招き、賃金コストを押し上げる恐れがある。米通信社ブルームバーグの創業者、マイケル・ブルームバーグ氏はトランプ氏の移民政策が「経済的大惨事」を招くと警告する。関税引き上げは商品価格に転嫁され、物価上昇圧力となりかねない。 トランプ氏はまた、規制緩和や行政の効率化を志向。米電気自動車(EV)大手テスラの最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスク氏を、政府機関の効率化に関する委員会のトップに起用する考えだ。 このほか、連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策決定について「大統領が意見すべきだ」と公言。FRBの独立性が揺らぎ、金融政策への信頼性が損なわれると懸念されている。