スマートプロジェクターの黒船「Dangbei Atom」に、中国テック企業の本気を感じた
明るい室内でも投影できる「Dangbei Atom」
Dangbeiは22年12月より日本市場に参入し、Amazonで販売するほか、23年9月にはヨドバシカメラ、ヤマダ電機などの家電量販店でも取り扱いを開始した。23年1月には日本法人を設立し、日本での事業を本格的に加速。現在、世界初のGoogle TV搭載4Kレーザープロジェクター「Dangbei DBOX02 (Mars Pro 2)」や天井投影も可能なホームプロジェクター「Dangbei N2」などをリリースしている。 同社はもともとスマートテレビ向けの定番アプリをリリースしていた企業で、中国ではソニーのスマートテレビにも導入された実績がある。長年スマートテレビのユーザー向けに展開してきたため、ユーザーが大画面のスマート機器で何を求めているのかというノウハウを蓄積していて、ソフトパワーでは競合他社をしのぐ。 19年より中国でプロジェクターの開発を始め、投影方式は映画館の映写機でも使われるDLP(Digital Lighting Processing)方式を採用しており、明るく鮮やかで長時間連続して使用でき、消費電力が比較的少ないのが特徴だ。また、自社開発の「DangbeiOS」が搭載され、「早い」「軽い」「カスタマイズ性が高い」で評価を得ている。 今回は、日本市場でもよく売れている「Atom」を体験してみた。これは、厚さ4.75cmのコンパクトなパソコンサイズのプロジェクターで、ALPD(Advanced Laser Phosphor Display)レーザー技術により1200lmの明るさを実現している製品だ。この1200lmという明るさだが、明るい室内でも投影した映像が問題なく見られるレベルだ。 投影される映像のサイズは40インチから巨大な180インチまで対応(推奨サイズは60~100インチ)し、三脚穴があるのでそれを活用して固定することも可能だ。プロジェクターといえば、スクリーンを別途用意しなければいけないというイメージを持つが、部屋に障害物のない壁があれば投射ができる。プロジェクターを使用する際に、斜めに映し出されたり、調整に手間がかかることもある。しかし、Atomは、台形で投影され、台形補正がDangbeiの長所のひとつで他社と比べても修正が素早く感じる。同様にオートフォーカスも速く、同社製品の大きな強みとなっている。 Android TVを導入するプロジェクターが多い中、Google TVを搭載しているAtomは珍しい。また、YouTube、Netflix、Amazon Prime Videoなどのストリーミングサービスが利用できるほか、TVerもインストール可能なので、テレビ番組はある程度見ることができる。 Android TVにはないGoogle TVの特徴として、動画サービスの横断検索があり、音声やタイピングで入力すると該当するコンテンツをインストールしたプラットフォームから検索結果を出してくれる。Googleの音声検索なので使い勝手は問題なく、リモコンとの組み合わせの操作は実に快適だ。 Googleアシスタントも利用できるので、声かけで映画などのコンテンツ検索が可能だ。本体にはBluetoothとスピーカーが内蔵されていることから、スピーカーとしても利用できる。総合出力は10W(5W×2)で内蔵の製品の音質としてはまずまずだ。 余談だが、Dangbeiの中国でのラインアップにAtomという機種はない。これに最も近いのがD5Xという機種であり、これのローカライズ版がAtomかとDanbeiに訊ねてみたところ、「Google TVの要求スペックが決まっていて、CPUやメモリについてはその規格に合わせるために中国版よりも若干スペックダウンしている」という。体感的には遅いと感じることは全くないのでご安心を。 ただ中国では前述の通り、Dangbei OSが入っているのでよりきびきびと動作し、ユーザー好みにカスタマイズできる。そこは「今後製品を出していく中でGoogleとGoogle TVで開発提携できる関係になり、国際版製品のソフトウェアをブラッシュアップできるようにしていきたい」と担当者は語っている。 (文:山谷剛史)