この春、最初の涙。初恋の人と今の夫のどちらを選ぶのか…オトナの選択をしみじみ描く【パスト ライブス/再会】
えいがの絵日記 その21
イラストレーターのともゑさんが、心に響いた映画をイラスト絵日記にするシリーズ。韓国出身の女性監督が自身になぞらえて描いたような、しっとりした1作を、淡い色彩で表現した。 【画像】『パスト ライブス/再会』えいがの絵日記はこちら
実らなかった初恋。せつない思い出
~韓国では「運命」の意味でもある“縁(イニョン)”。 「ふたりは前世(パストライブス)からの縁」という風に~ ソウルに住む12歳の女の子と男の子、ノラとヘソン。お互い恋心を抱いていましたがノラが親の都合で海外へ。その後すれ違うこと24年――ヘソンはノラに会いに行くことを決意します。彼女が結婚していることを知った上で…「君にずっと会いたかったから――」
努力、成功、そしてまさかの再会
韓国系アメリカ人として ニューヨークで劇作家になる夢を叶えた36歳のノラ。移民として必死に生きる彼女にとってヘソンとの再会は故郷との再会。懐かしい韓国ソウルの匂い、思い出…ずっと抱えていた心の穴が埋まっていく…そして「兵役で君のことばかり考えてた…」13時間かけてやって来た初恋の人からの言葉。
夫もまた大切な人
同業者~作家の夫は“何か”を察知 帰宅して妻ノラはアメリカ人の夫に素直にありのままを報告。「君の寝言は韓国語だね。まるで君の中に僕の行けない場所があるようだ…」妻の母国語をカタコトでも学ぼうと努力するやさしい夫。あさって帰国するヘソン。その前に3人で会いましょう。
静かに心にしみる彼女の選択
ひとりの女性を巡るふしぎな縁。ぎこちなさと温かさが混じった空気。悪役はいません。誰も怒りません。男性ふたりの度量が深いんです。そんな中で、ノラはどちらかとの“縁”をほどかなくてはいけない…気が付けば、ずっと身をのり出していました。たった数秒の「間」が何十秒にも感じてしまう、そんなラストシーンだったんです。
『パスト ライブス/再会』(2023) Past Lives 上映時間:1時間45分 アメリカ・韓国
監督・脚本:セリーヌ・ソン 出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ 他 仕事も結婚も。ニューヨークで幸せを手にした韓国出身の女性ノラ(グレタ・リー)。その前に、初恋の相手へソン(ユ・テオ)が現れたとき、心が揺れる…。 韓国出身の新鋭セリーヌ・ソン監督が、話題の映画スタジオA24のバックアップで作り上げた大人のラブ・ストーリー。体験を基に自ら書き上げた脚本と静かな演出が高く評価される注目の監督だ。
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